このレビューはネタバレを含みます
子供と言うのは生まれた瞬間からさまざまな理不尽をひとつひとつクリアして仕上がっていくもので、義務教育だったり受験だったり、親や兄弟、友達との関係性、裏切ったり裏切られたりしながら成長していく。誰しもが人間であるからこそ生まれた問題、皆んな何かしら苦しんでいて、持ち合わせた歪みから対立が生まれる。さらにコミュニティとは別に歴史的な政治的な変化にも対応していかなければならず、人生とは生きる意味とは生まれて来た意味とは、わからないわからないの繰り返しの毎日を送る。鬼教師は一日は一日でもう戻らない一日だと言った。その通り。でもそんな中で時折光のような存在を見つけることがある。大好きな人と心を通え会えた瞬間、世界は光り輝き生きる実感を得る。それを立て続けに失ってしまった主人公なのだが、親の前で兄に殴られた時のような感情を爆発させる様子をここで監督はあまり映していない。先生の自宅でお参りするシーンもない。あくまでふわりと表現すること抑え、死ぬことよりも生きることを強調して終わらせた。"母親"は子供にチヂミを作り食べなさいと言い、ウニもしっかりと食べる。友達と自殺について話していた主人公が「存在する」ことを学んだ瞬間が見えた。その上で殴られて来た"兄"の運転する車で亡くなった現場へいくシーンにより家族はまだ壊れていないことを示し、最後の仕上げとしてこの世には仕方がないこともあると達観するかのように締めた。ひとつの経験となり悲しみは過去になってしまうのかもしれないが、決して忘れることの出来ない苦しさを重ね背負って生きていく、それが大人になること。さて、もっととことん酷い家庭などいくらであるし、ウニの置かれた状況に対して生温いと感じる人もいれば可哀想と思う人もいるだろう。人それぞれの感想があっていい、さまざまな感動があっていい、押し付けがましさのない優しい映画だった。
それにしても塾の先生に言い返したウニはカッコよかった。一回は出ていくが戻る演出も素晴らしかった。クソみたいなババアやジジイに色眼鏡で上から目線で説教垂れられてるだけじゃない、やっぱり相手が誰であろうと言いたいことは言わなきゃなんねえ時がある!!!殴られたら殴り返すのもまた選択肢のひとつなのだ。