よっひ

はちどりのよっひのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
4.2
思春期。子供と大人の狭間で。
日常の中で湧き上がってくる、ぶつけようのない怒り、自分自身への苛立ち。

それでもやがて、様々な人々との触れ合いを通して、「世界の見え方」が決定的に変わる瞬間が訪れる。
それは同時に、思春期の終わりでもあるのだと、ラストシーンの主人公ウニの眼差しから感じた。

ヨンジ先生くれた真っ白なスケッチブック。
「世界は不思議で、この上なく美しい」と気づいたウニ、希望に満ちた彼女の"これから"を象徴している。
彼女の未来に何が待ち受け、それに立ち向かう彼女は何を描いていくのか。

そして、ヨンジ先生が心の奥底に抱えていたもの。
最後の方に描かれるのだろうな、と一瞬でも思ってしまった自分が恥ずかしい。
まさに、先生が投げかけた「顔を知っている人は何人いて、その中で心をわかる人は何人?」という問いに答えがあった。

作中のウニ、もっと言えば鑑賞者である私が、ヨンジ先生の心情を完全に理解することは不可能なのだと。
つまり、先生の抱えているものを描くこと自体がナンセンスなのだと。

聖水大橋の崩壊に見られる近代化の負の側面、両親や兄の姿が象徴する家父長制や学歴至上主義の鎖。
めまぐるしく変化し、限りなく歪な社会の中で、必死にもがく一人の少女の姿が、強く胸を打つ。
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