はる

はちどりのはるのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
4.1
みてる人が想像する余白がたくさんある映画だった。ストーリーや台詞で明確に少女の気持ちが示唆されるわけではない。起承転結や明確な誘導もない。
それでも少女の戸惑いや不安や寂しさがよく伝わってきた。

彼氏や後輩、友達、家族、ちょっとずつズレてうまくいかない関係性が歯痒くて、なんでこうなるんだろうって。
同時多発的に頭の痛い悩みが噴出して、遣り場がない感情と、思い通りにいかないことばかりで、辛いのか、悲しいのか分からなくなる感じ、みんなのスピードに自分だけがついて行けていない感覚。
あの年頃の生きづらさ、閉塞感、ままならなさ。同じ空間にいながら溶け込めない、思春期の感情のとげが映し出されていた。

塾の先生みたいな、自分の社会生活とは無関係な大人に救われることがあること。
いつの間にかいい大人になった自分も、いつか誰かのああいう存在になれたらいいな、と思いながら見た。

救いになるように思えた先生でさえ、突然の事故で理不尽に彼女の前から姿を消してしまって、静かな映像の中で少女の気持ちがせわしなく揺れ動いていることが、手を取るようにわかった。

音楽もすごく良かった。映像や行動に現れない分、音楽が感情の変化を移していたように思う。
静かに進む映画の中にいくつもの主張が込められていた。私はいくつ拾うことができただろうか。

あなたには知り合いが何人いますか?
その中で心を分かる人は何人いますか?
折に触れて思い出したい。
はる

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