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はちどりのmuraのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
4.0
1994年。ワールドカップアメリカ大会が開かれた年。となると前年は、「ドーハの悲劇」か。…民主化後まもない韓国は、経済発展のまっただ中。ただ北朝鮮では金日成が死に、不穏な空気も漂いはじめる。そしてこの映画も描くように、経済発展の負の面があらわれる。そういえばあのとき、韓国ではこういったことが多発していたような。でもその翌年、日本ではさらに大きなことが起こるんだけれど…

あのころ韓国は、日本にとって明らかに遠い国だった。でも当時を描いたこの映画を見ると、まるで日本のようにも思える。

中学生のウニ。狭い集合住宅に、父、母、姉、兄とともに住む。威圧的な父とそれに黙って従う母、夜遊びをくり返す姉と優等生であることを期待される兄。住宅以上に窮屈な家族関係のなか、鬱屈した思いをいだきながら友達や恋人に憩いを求めるウニ。だがそこにも、問題が生じる。そういったとき出会ったのが、漢文塾の先生・ジウン。ウニにとってジウンの存在が唯一の救い、唯一の希望となっていく…

ヒリヒリと痛みをおぼえる感じ。国は違えど、こういった閉塞感は共通か。家族や友人だからこそ、相手を傷つけることに無自覚なのかもしれない。

家父長制社会。父はとにかくプライドが高く、高圧的。その父の期待を背負う兄は、優等生であろうとするも暴力的。父と兄と、家父長制社会の典型のようであるが、ふたりとも情けないほどの弱さも見せる。こういったところは、陳腐な言い方かもしれないが、女性監督ならではの視点と描写かと。

「パラサイト 半地下の家族」とはまったく違うかたちで韓国の社会や家族のありようを切りとる。かつて遠い国であった韓国も、今はそうではなくなった。そのことに大きく貢献したのが映画だと思っている。とりわけこういった映画が。
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