純粋で感受性が強くて、けれど、どこに辿り着いたとしても価値を感じられないぐらい、見渡す世界は窮屈すぎる。
今をやり過ごすのにもがむしゃらで、野放図に動きまわることしかできない。
少女の醸し出す空気は、この世界が間違っていることを訴えているけれど、世界はいつまでもこの世界のままだ。
”私は間違っていない”
90年代のソウルは儒教的に禁欲的だから、思春期の少女だったら当然にそう思うことを行動に移すと全て否定されてしまう。
受け止めてくれる大人なんて見当たらないんだけど、塾の先生としてやってきたヨンジはその独特の方法で少女ウニと向きあってくれる。
ウニにとって初めての”本当の大人”だった。
抑圧的な世界を本当にうまく描けていると思った。
みんなそれぞれ一生懸命で余裕もなくて、受験でいい大学に行くぐらいしか光明がなくて、鬱屈とした暗い雰囲気が漂う。
曇り空のような色彩。
出口のなさをひしひしと感じる。
塾の先生みたいな、ちょっと社会から外れている人が理解者になってくれるというのはありがちと言えばありがちなんだけど、こういう世界にあってまともな人ってそういうところにしかいないのが事実だし、もしかしたらどこの世界でもそうなのかもしれない。
そういう存在としてのヨンジは、佇まいがどこかミステリアスで魅力的だったし、語る言葉も地に足がついていて等身大で説得力があった。
ウニの少女としての透明感とともにこの映画のリアリティーを担保しているように感じた。
少女の内面を鋭く描いて思春期を思い起こさせ世界のやるせなさを再認識させる。
救いのないような世界だけどその世界を生きる少女の生命力を感じさせてくれる。
じんわりと身に染みていくような感動のある映画だった。