ヒロ

はちどりのヒロのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
4.8
足が退化しているため高速で羽ばたき空中で静止するようにホバリング飛翔を続けるハチドリはまさに主人公ユニそのものである、下に着地したくてもできずかといって上に上昇しようものなら鳥籠の柵が待ち受ける。そんな閉塞感と孤独を感じる少女の内面を表すのは普段なら裏の演出であるはずのバックショットの応酬である、もちろんファーストカットはバックショット、カットバックもバックショット、フィックスの上手にちょこんと腰掛けるユニのバックショットににじり寄るトラックアップ、このしつこいまでのバックショットが今作の根幹を構築し粘り強く支え続ける。朝早くから店の仕込みに駆り出され家では愚痴だらけゴリゴリの家父長制を敷く典型的な父、幼い頃から男のために多くのことを諦め尚も男に隷属し続ける典型的な母、一家の期待を一手に背負いプレッシャーをかけられ続ける長男からの暴力、半ば見捨てられ気味の不良の長女、こんな世界からいつか抜け出せますか?私の人生いつか輝きますか?との遂に誰にも聞くことの出来なかったその問いに優しく微笑みかけるように提示されるラストのフロントショット、待ってましたここまでしっかり取ってましたと言わんばかりのユニの面のショットがすべてを持っていく。確かに今は飛び続けるしかない、ものすごく大事だったものが何でもないものに変わるとき上を見上げれば世界は少し広くなっている、何かを諦め重い荷物を降ろすとき今よりは少し飛びやすくなるだろう。そのとき少し思い出す、あぁこんなこともあったねと。

2020-61
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