つかれぐま

ブラック・ウィドウのつかれぐまのレビュー・感想・評価

ブラック・ウィドウ(2021年製作の映画)
3.5
21/7/8@調布_ULTIRA

<見事な新旧交代>

「キャプテンマーベル」で試みた<女性エンパワーメント>の語り直しに成功!そしてナターシャへの鎮魂歌。

おなじみマーベルのテーマが鳴り響く
何度も聞いてきたあのファンファーレが、今回とても新鮮でウルっと来た。多くの人が同じ感想をあげているので笑ったが、今回から何か変えたのだろうか。劇場で聞くこれはまさに魔曲。

スパイ映画の装いで始まり、007やMIPなどのレガシー作品の名場面を美しい「姉妹」が確信犯的になぞるように進んでいく楽しさ。そういえばスパイ映画は数多あれど、完全な女性主役でハニートラップも仕掛けないのは初めてじゃないかな。ここからすでに女性エンパワーメントが始まるのだが、「キャプテンマーベル」とは違う、肩の力が抜けた感じが見やすかった。

2人のシスターフッドが楽しくて、笑えて、少し泣けて最高だった。今回初登場のエレーナによるメタなアベンジャーズいじりが面白い。新キャラ・エレーナは最大の収穫かも。フローレンス・ピューの芸達者ぶりは、海千山千のMCUの中でも光っていくのは間違いないと確信。彼女の「シェイプ」もいい。男性並みの肉体改造、極端なダイエットといった「苦行」に対するアンチテーゼといえる自然体。他人の眼を意識し過ぎない、この自然体こそが本当の女性解放なんじゃないかと思わせる。

さて、我らがナターシャ。
いよいよ本作が最後になる訳だが、トニーやキャップとのウエットな別れとは違い、割とドライに終わる。これで良かったのだと思う。常に人を思い自分のことは後回し、という<彼女の信条>を考えると、こういう弔いこそナターシャには相応しいのかもしれない。

配信ドラマのようなサプライズ展開はない。本作の前後を知るファンには、ほぼ想定内の内容だが、実はそれこそが見たかった話。「やっぱりナターシャは最高で、サノス戦のMVPは彼女だ」クインジェットに向かった彼女の笑顔で、それさえ確信できればサプライズなんて要らない。

これはナターシャへの鎮魂歌だから。