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ブラック・ウィドウのsanbonのレビュー・感想・評価

ブラック・ウィドウ(2021年製作の映画)
4.1
「フェーズ4」"真の幕開け"に相応しい傑作。

今作は「ナターシャ・ロマノフ」こと「ブラック・ウィドウ」が「シビル・ウォー」にて「ソコヴィア協定」に違反した事で追われる身となってから「インフィニティ・ウォー」で「キャプテン・アメリカ」らと合流するまでの空白の時間に何があったのかを描いた、スパイアクション大作となっている。

元々、フェーズ4は今作を皮切りに続々と展開されていく予定であったが、コロナウィルスの影響を受けスケジュールが大幅に変更された事をきっかけに、先に「Disney+」内のオリジナルドラマ3作が先行配信される事となった。

「MCU」は、ポストクレジットなどを用いて作品間の繋がりを示唆する手法が楽しみの一つともなっているのだが、公開順を入れ替えた事で一部その内容が変更になったり、そもそもポストクレジット自体が無くなってしまったりもあったと聞くが、恐らくはそうまでしてでも今作は劇場公開にこだわりたかったのだろうと、観終えた今ならば十分に理解出来る。

それは「エンドゲーム」が終わり「インフィニティ・サーガ」にも終止符が打たれた今、改めて思い知らされる事となるのは、犠牲になったのは「アイアンマン」だけではないという事実であり、それを伝える場をしっかりと設ける必要性があったからである。

兎にも角にも、ここまで待った甲斐があったし、劇場でこれを観れて本当に良かったと思える出来栄えに、ドラマシリーズだけでは燃え上がらなかったMCU熱が一気に再燃してきた程だ。

もう次の作品が気になってしょうがない。

次は「シャン・チー」で、正直現時点では個人的に期待薄だけど、初期から引っ張り続けた「テン・リングス」がいよいよ登場する訳だから、恐らくこれも間違いのないクオリティになっている筈だから、安心して公開日を待てるというもの。

そして、ドラマを先に観てから今作で久しぶりに劇場用作品に触れると、映像的なクオリティに遜色はないが、スケール感やテンポなんかはやっぱり映画である事を実感出来る内容だし、なによりも尺が短い分の密度がギッチギチで、最近はドラマの週一小出しの感覚に慣れきっていたせいか、本当に怒涛の展開を上映中は堪能出来るようになっていたので、2時間以上とそこそこ長い上映時間もあっという間に終わってしまった感覚だった。

そして、今作はナターシャの"原点"を知る物語となっているのだが、それが本当に重い話ばかりで、ナターシャの幼少期から暗殺者になるべく背負ってきたものが次々と明らかにされていく度に同情心を募らせ、否が応でも感情移入させていく展開は見事としか言いようがなかった。

それこそ、個人的にブラック・ウィドウは正直いてもいなくてもどっちでもいいようなキャラクターで、今作も制作が発表された時はMCU作品だから観はするけど正直興味ねーって状態で、エンドゲームで犠牲になる場面ですらあまり動揺は無かったのだが、今作を観た今はナターシャがもういない事が悲しくて悲しくて仕方なくなる程にまでなっていた。

そして、ナターシャと擬似家族を演じるファミリーの面々も全員キャラが立っていて物凄く好きだ。

「ミッドサマー」で体型があまりにずんぐりむっくりし過ぎていた「フローレンス・ピュー」も今作ではアクションを頑張っていたし、なにより強気な性格の裏に見え隠れする弱さを孕んだキャラクターがもの凄く似合っていて、決めポーズをイジるくだりなんかもギャグが冴え渡っていて普通に面白かった。

ちなみに、父親役で登場する「レッド・ガーディアン」だが、原作ではナターシャや「サム」のように生身で頑張るヒーローのポジションのようなのだが、MCUではロシア版キャプテン・アメリカとして超人化計画を施された設定に変更されている様なので、もしかしたら「エレーナ」同様再登場もあるかもしれない。

そして、なにより「タスクマスター」が超カッコいいのだ。

タスクマスターは「フォトグラフィック・リフレクシズ」というトレース能力で、相手の動きを完コピして戦う事が出来る強敵なのだが、劇中には登場しない筈のキャップや「ホークアイ」「ブラック・パンサー」がまるでそこにいるかのようなアクションを披露していて、あの演技を確立させた役者ならびに製作陣は本当に凄いと思う。

そして、そんな生身では到底敵いっこない相手にナターシャをぶつけると聞いて、一体どうやって決着を付けるんだろうと思っていたのだが、それにもなるほどという結末が用意されていて、決して不可抗力とか偶然を味方に付けた勝ち方ではなかったのが非常に好印象だった。

そして、その行いがナターシャがこれまでずっと貫いてきた「自分を犠牲にしてでも全部助ける」という信念に、しっかりと帰結しているのがなによりも素晴らしいのだ。

最後にこんな締め括り方をされてしまうと、本当にナターシャが今後出てこないのが惜しくてどうしようもなくなるのは、映画としてそれだけ完成されていた証明に他ならない。

再三言ってしまうが、今作がMCUフェーズ4の真の開幕であり、今作を観ればMCU熱が下火になっていた人でもたちまち燃え上がってしまう程に完璧なまでの傑作であったと思う。

最後には、お約束のポストクレジットで「ファルコン&ウィンターソルジャー」で登場した「ヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌ」が現れて、場を乱さんとなにやら企んでいるようなので、今後の展開からも目が離せない。