ジャン黒糖

ブラック・ウィドウのジャン黒糖のレビュー・感想・評価

ブラック・ウィドウ(2021年製作の映画)
3.3
ディズニープラスで見放題対象になったのでやっと鑑賞!
本来の順番的には本作でフェーズ4が始まり、ドラマ『ワンダ・ヴィジョン』『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』『ロキ』、そして『シャンチー』と続く予定だったところ、コロナ影響により『ロキ』と『シャンチー』の間に公開された。

本作は女性、『シャンチー』はアジア系、来月に公開を控える『エターナルズ』は多国籍人種、という作品ラインアップからもわかるとおり、特にいまのアメリカの映画業界で重視されている社会意識、考え方を作り手自身とても意識的に取り組まれているであろうことは誰の目にも明らか。
これまで、重要な役どころをずっと担っていながら一度も主人公としてフィーチャーされてこなかった、大げさに言ってしまえばキャラのMCU全体への貢献度に比して不遇な立たせ方をしていたブラック・ウィドウこと、ナターシャを、満を持して堂々たるど真ん中に据えた本作は、MCU映画のフェーズ4の目指すところの姿勢、多様性を感じさせる。

今回、改めてMCU過去作のポスターを振り返ってみると本作『ブラック・ウィドウ』以前のMCU作品って実は(ver違いのポスターとかを除けば)ほぼ全て、主人公の姿を真正面から捉えたポスターがなかったことに気付いた。
これまでのMCU作品はキャラの出で立ちよりは躍動感を感じさせるポスターが多く、逆に『ブラック・ウィドウ』『シャンチー』『ワンダ・ヴィジョン』『ロキ』などは主人公の立つ姿を真正面から捉えたポスターで、これはたまたまかもしれないけど、フェーズ4では改めてキャラの深掘りを堂々やっていくぞ、という制作側の意図だったりするのかな、と推察。


というのが作品を観る前から感じていたルックの話。
で、作品の内容自体はどうだったかというと…

うん、面白かった!!
スカーレット・ヨハンソン、見事な主人公!!
フローレンス・ピュー、『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』に続いて、こういう”妹”キャラ、さすがっす!!!
けど…!!お話は少し地味だった…。

一応MCUは全映画作品鑑賞済み、ドラマもディズニープラスが始めた『ワンダ・ヴィジョン』以降は『ロキ』最終話まで全話鑑賞済み、ガオーさんのYouTubeもわりと見ている、程度のMCUライトファンではある。
そのため、『~エンドゲーム』でなぜ彼女はあのような自己犠牲的な行動を取らなければならなかったのか、そしてなぜいまのタイミングで彼女の過去(本作は『~シビル・ウォー』の後半からラストまでの間に起きていたサイドストーリー的な位置付け)は気になっていた。

たしかに彼女の自己犠牲的な行動の根本的な納得できる理由は描かれる。
それに、上述のとおり、これまでは主人公のサポート役になることの多かったブラック・ウィドウを主人公に据える社会的メッセージもわかる。
ただ、そういった社会的意義の大きさとかを一旦切り離して、物語上いまブラック・ウィドウを描かないといけなかった作品かといわれればその点の期待値は個人的には超えなかったかな、というのが正直な感想。

その主な理由は、過去を描くということは、すわなち良くも悪くもMCUがこれまで築き上げてきた歴史の長さから必然的に醸成される本作で描かないといけない要素が多くなってしまい、結果的に映画全体に制約の多さが目立ってしまったことにあるのかなぁと。

たとえば上述のとおり、『~エンドゲーム』で描かれた彼女の自己犠牲的な行動に至る根本的な背景と、物語上『~シビル・ウォー』と『~インフィニティ・ウォー』のブリッジとして整合性もって本作を描かなければいけない。


また、劇中登場する、ナターシャの妹で、フローレンス・ピュー演じるエレーナや、敵となるタスクマスターなどは、ナターシャ含め彼女たち女性の抑圧されてきた生き方を見せる、まさに現実社会の鏡というべき存在としては機能するが、彼女たちの関係性はラストで納得できるようで若干腑に落ちなかった。
物語とは関係ないところだと、画面の真ん中に大きいテロップで西暦とか舞台が表示されるのは『~シビル・ウォー』からの地続きを感じさせる。

なので、本作はタイムライン上は『~シビル・ウォー』の後半に起きていたサイドストーリー的な位置付けではあるけど、個人的にはもっと前の彼女を描いてもよかったと思う。
それこそ初登場となった『アイアンマン2』に繋がるまでのバリバリ暗殺者としての彼女と、それからアベンジャーズに出会って変わっていく彼女を描いて、終わり方ももっとオープンエンディングにした方が、彼女自身がこの映画の後どうなるかを我々観客は知っている分、感動も大きかったのかな、と思った。

ただ、演じる役者陣はみんなよかった。
ブラック・ウィドウといえば、のお決まりな着地ポーズを、「イヤイヤあんたヒーロー然としてるけど、元は暗殺者じゃん」ということを暗に示すかのようにエレーナがやってみるシーンとかよかった。
2人のカッコ付きの両親もよかった~。

そして主人公を演じたスカーレット・ヨハンソンは画面映えするまさにスター。
彼女は本作では、まさに2つの”家族”の”アネゴ”だった。

映画館で鑑賞はしなかったものの、パンフレットだけは毎回充実のMCUなので今回も買っておいてよかった〜
ジャン黒糖

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