Foufou

ブラック・ウィドウのFoufouのレビュー・感想・評価

ブラック・ウィドウ(2021年製作の映画)
3.0
オープニングでカート・コバーン使うの、いいですよね。あんなふうに女の声でアンニュイに歌われると、なんともエロティックです。しかし、(男にとって)扇情的なのはここまで。主役が女たちでも、フェミニティは意図的に抑えられている。コンプライアンス的にも、エロティシズムは今般押し出しにくいのかも。ワンダー・ウーマンはそういう意味では攻めているとも言える。そういえば、こちらもあちらも監督は女性です。

女性性を生物学的に奪われていることが作中明らかになります。ハニートラップこそは最大の武器であるはずの女スパイたちが、もはや女である必要ないじゃん、という強さとマチズモを発揮していく。それじゃ、図体のデカい男のアクションを見たほうが、見応えあるんじゃない、と突っ込む御仁もあることでしょう。「父親」救出作戦の、もどかしさと心もとなさといったらなかった。たださえスカーレット・ヨハンソンもフローレンス・ピューも小柄な役者さんですからね。ワンダー・ウーマンのガル・ガドットは、その点、戦いの女神としての威厳がございます(それを作り手が生かしきれていないようですが)。

アクション映画ですもの。おのずと肉体そのものが俎上に上がるのは、これは致し方ない。

監督だってそこはわかっていらっしゃるのでしょう。本作は、エロスの代わりに母性が顔を覗かせます。それとてフェミニティのひとつですから。ただ、それだけでは、アクション映画にそぐわないですからね、おのずと家族、と枠組みが大きくなって、次第に家族って素敵だよねって映画に落ち着いてゆく。

それは、まあ、なんというか、その、要するに、オモシロクナイヨネ(最後は早口で言ってみた)。

フローレンス・ピューがスカーレット・ヨハンソンの後継者なんですね。『ミッドサマー』が強烈すぎて、あの印象がなかなか抜けませんね。うつむいてこらえるような顔をすると、まるでおんなじですもの。

そうそう、大物女優の競演を堪能する映画でもございますね。レイチェル・ワイズ、年輪を刻まれました(当たり前)。『ハムナプトラ』で魅せた妖艶な姿態も、数々の文芸作品の出演を経て再びアクション映画に戻っていらっしゃると、すっかり脂が抜けて知性の人としてそこにあるって感じ。

それもまた、よし、です。

訓練のシーンこそ見たかったですね。どんなふうにあの姉妹が頭角を現していったのか。
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