海

ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -の海のレビュー・感想・評価

-
二つではほどけてしまいます。こうして三つで結えばほどけません。
確かそんなことをヴァイオレットが言った。幾つか山場のある本作の、何でもないこのシーンが、個人的には一番印象に残っている。ドールと呼ばれる代筆屋のヴァイオレットが、彼女の手紙によって生かされた少女の髪を結いながら、言った言葉だ。タイトルにある「永遠」とは何のことだろうと考えてみるとき、この言葉そのものだろうと思う。本作にある"手紙"の概念は、端からほつれていかぬように胸の真ん中をつらぬくニュートラルをもって、はじめて完成するものなのだと。二つのものを固く結びつける三つ目の何か。有限である動力と永遠である想いの融合がヴァイオレットだった。

まずわたしは原作を読んでいないしアニメ版も視聴していない。正直なところ、孤児院育ちの少女が「郵便屋が運ぶのは幸せ」と言い切る姿には違和感しかなかったし、全寮制の学校に閉じ込められた少女の曇った心が晴れていくまでの描写は少し強引すぎるようにも思えたし、感情の描写は確かに豊かながらそこに行き着くまでの過程には物足りなさを感じてしまった。わたしが泣けなかったのは、それよりも先に彼らの中で物語は勝手に完結し、泣いてしまうからなんだろう。だけれど、だからこそ、激しく純粋な感情の高波を目の前にして、その景色/溢れんばかりの想いをたった数行で打ち終えてしまうヴァイオレットの義手の指先に、わたしはひどく胸を打たれた。ヴァイオレットは、鳥籠に閉じ込められた少女の手を引きながら、時には雨降りの会話に耳を傾けながら、孤独の中に放り込まれた人々の「真ん中」を探りながら、はなればなれの感情と言葉をきれいに結わえてしまう。彼女は毎朝、自身の長い髪を三つ編みに結いながら、何を思っているのだろう。痛みを拭うことはできない、それなら一体何が、彼女をそこまで突き動かしているのだろう。目を開いて歩く理由。それはあなたがとうに知っているはずの一つの感情。

2019/9/8