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ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -のmaverickのレビュー・感想・評価

5.0
京都アニメーション製作のテレビアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の外伝作品。

文句なしに満点。欠点が見当たらない。本当に美しい素敵な素敵な作品だった。
本作だけでも作品の内容は分かるし、素晴らしい作品性も伝わると思う。でも未見の人は是非テレビ版からまずは観てほしい。
主人公ヴァイオレットは先の大戦で両腕を失い、機械の義手をつけて今は自動手記人形として代筆業をしている。彼女は戦争で兵器として扱われ、その目的で育てられたために感情の起伏に乏しい。上官であり、自分が大切に慕う相手の最後の言葉「愛してる」の言葉も理解出来ず。人々の想いを記す代筆という仕事と向き合いながら、最愛の人の最後の言葉の意味を少しずつ理解してゆく。

ヴァイオレットは依頼人からの命により、イザベラという令嬢の家庭教師を任される。代筆とは違いイレギュラーな職務ではあるが、それもヴァイオレットは難なくこなす。だが、このイザベラが性格に難ありな女性で少々手こずる。だいぶひねくれた性格なのだが、それも彼女の生い立ちゆえ。それが判明すると、なるほどなと理解出来る。ヴァイオレットと共に過ごす内に心を開いてゆくイザベラ。そしてヴァイオレットもまた、自分の知らない感情をイザベラから教えてもらうのであった。
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』という作品の本質から逸れているように見せて、しっかりと本筋である代筆に結び付ける過程が見事。後半パートと前半パートで話を分け、それを一つに繋げる鮮やかさも素晴らしい。

大切な人へ想いを届ける。それがこの作品のテーマ。それは外伝でも全くぶれない。手紙に託す一人一人の想いが描かれる。手紙にしたためるからこそ表せる美しさ。人から人へと届けられる想いがそこにある。そしてそれを届けるという仕事の素晴らしさも。ヴァイオレットは郵便社に属する代筆人であり、それを届ける側にも焦点が当てられている。人と人を繋ぐことの素晴らしさ。思いやりや優しさ、愛など、それらの気持ちを依頼人の仕事を通してヴァイオレットは知ってゆく。依頼人の想いが、間に入るヴァイオレットの心にも影響を与える。人から人へ、愛が伝わってゆく。今の世界に必要なことだと、この作品ではそう伝えているのだ。

その想いが込められた作品性。本当に素晴らしい。
優しさや愛に溢れていて、監督やスタッフの熱意が伝わってくる。映像は水彩画のように美しく、日本のアニメーションの中でもその美しさは最上位クラス。さすが京都アニメーション。物語と相まって本当に美しい。声優さんもみんな上手くて、ちゃんと本職の人を起用している。伝えたいことをぶれずに伝えられる表現力を持った人を大事にしている。音楽も作品にあった心癒される曲が使われ心に響く。
この作品に込められているのは、大切なことを観る人へきちんと届けたいというそんな作り手の想いだ。作り手から観る側へ届けられる想い。鑑賞しながら何度も何度も涙が溢れた。なんて美しい作品なんだろうと。こんな想いを込めて作品を届けてくれた人達がいたんだ。作った人達の結晶だ。こんな美しい作品を我々に届けてくれたんだなと。こんな優しい作品を手掛けてくれた人達が凶悪な事件で命を落とさなければならない理不尽さ。世界はこの作品のように、優しく愛で溢れるようにならなければならない。そう強く思う。

大切に想う気持ちを相手に伝える。その気持ちが相手の生きる喜びになる。人の数だけそれが生まれる。優しい世界、愛のある世界。それを願ってやまない。本当に美しい作品。大好きだ。この作品に携わった方々に愛を込めて。本当にありがとうございました。
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