It Must Be Heaven(原題)の作品情報・感想・評価

「It Must Be Heaven(原題)」に投稿された感想・評価

[パレスチナ人は"思い出す"ために酒を飲む] 90点

一つ前の長編『時の彼方へ』から10年の年月が経ち、現代のユロ伯父さんとも言えるエリア・スレイマン演じるES氏はパレスチナから新天地パリとニューヨークへ降り立つ。これまでの作品でパレスチナを出なかった彼を囲む状況の変化は、本作品ではストレートに語られる。パリのエージェントはスレイマンの脚本に対して"パレスチナには同情するが、これじゃない"と難色を示し、"こんなことどこでも起こりうるじゃないか"と当たり前のことまで言われてしまう。友人ガエル・ガルシア・ベルナルと一緒に会うことになったニューヨークのエージェントはスレイマンの映画に対して"頑張って"と伝えるだけで、しかもベルナルの発言も"『天国は待ってくれる』っていう中等の平和についての映画"と完全に間違っている。20年以上のキャリアの中で、状況は変わってないどころか寧ろ悪化しているのだ。スレイマンはそれらの言葉を忠実に守って一本の映画にしてみせた。

映画はざっくり三部構成になっている。パレスチナ→パリ→ニューヨークと西へ向かう旅路の中に、無知な人がパレスチナに期待している要素が多分に含まれている。パリでは、いきなり犯罪者と警察が追いかけっこを始め、炊き出しに大勢が並び、道路を戦車が走行し、早朝から戦闘機が轟音を立てて飛んでいる。ニューヨークでは皆が銃を携帯している夢を見て、所属不明のヘリコプターが上空を旋回する。一般的に想像する"パレスチナっぽさ"はなく、三都市を同列に比較し、それらの類似性を緩く指摘しているのだ。その上で、本作品に関する企画を否定されたエピソードや本作品から派生したアフタートークなどメタ的な視点も取り入れることで、『It Must Be Heaven』という作品を中心に時間軸を前後にも広げ、摩訶不思議な世界を展開していく。

関連性の薄い小ボケを並べているようで、どれも中々な毒を含んでいるのが巧妙なところ。題名に呼応するかのように、セントラルパークに天使が降り立つシーンは予告編でも引用されている通り本作品の最も印象的なシーンだ。彼女は上半身にパレスチナ国旗と"パレスチナに自由を!"なるボディペイントをしており、警察は上裸で公園に登場し"公共の風俗"に反する彼女を捉えようと躍起になる。彼女が警察から追われているのは勿論上裸になっていることが問題なのだが、それに対応する警察の数がいつも通り過剰であることを鑑みると、それ以外の"公共の風俗"を思い描いてしまう。空港のシーンでは一人だけ身体検査に回されたスレイマンが、慣れた手付きで検査を受け終えた後『D.I.』の忍者のように検査棒を"回し"始める。彼がパレスチナ人だからという理由で理不尽に求められてきた検査の数々を感じて薄ら寒くなる。これら断片的に散らばったエピソードの端々から欧米の人間はパレスチナの現状なんぞ全く興味がないんだろうことは伝わってくる。ニューヨークのタクシー運転手なんかスレイマンの出身地を知って(この映画で唯一スレイマンが言葉を発する)狂喜乱舞し、初めて見たパレスチナ人として料金を奢ってくれる。それほどまでに日常から"遠くにいる"存在なのだ。"遠くの方で戦争やってるちょっと汚いイメージの国=パレスチナ"という雑なイメージについて、スレイマンはとぼけ顔で三つの都市の類似性を提示しながら、最終的にパレスチナの最も活気に満ちた場所へと導く。といってもパリやニューヨークと対比させてお家自慢をしているわけではなく、一般的にテロや戦争というイメージのあるパレスチナも、それらの都市と変わらないことを改めて提示しているのだ。

"パレスチナは元に戻る、でもそれは僕らが死んだ後だろうね"という占い師の言葉に呼応するように、故郷の未来を担うであろう若者たちが踊り狂う姿を見つめるスレイマン。未来を彼らに託すような目線は、目を閉じるような暗転によって遮られ、映画が内包する映画以前/映画/映画以後の視点はパレスチナに対しても同様だったことが明らかになる。クラブ音楽が鳴り響く暗闇で、彼は何を思うのだろうか。
sat

satの感想・評価

-
鳥とのやり取りが可愛いかった
NYにいる人がみんな銃持ってるのも面白かったな

全体的にセリフが少なめなんだけど、笑えるシーンが散りばめられていて楽しく見れた

女の人が往復するシーンとか、なんの描写なのかわからないところも多かったな
勉強したらわかるのかな
まおう

まおうの感想・評価

4.0
カンヌ国際映画祭にて審査員特別賞を受賞したパレスチナ人監督によるコメディ。
パレスチナ人映画監督の主人公の目線を通して故郷と映画の企画を売り込むために訪れた華やかなパリとニューヨークの皮肉にも何処か似通った影の部分を面白おかしく描く。

人々が持っている「外国」に対する先入観や偏見を誇張しまくったブラックでシュールな笑いで淡々と描くストーリーは事前情報なしだと最初呆気に取られるが、段々癖になる。パターソンとか好きな人は絶対ハマる。
パリのシーンとか自分達が揶揄されてるにも関わらずあまりのあるあるさに観客も爆笑。
案の定、謎の高速連続会釈とひっっどい発音の英語を繰り出すビックリするほど外見がスタイリッシュな日本人観光客も出てくるけど、最近パリにいるスタイリッシュな若いアジア人観光客は大体中国とか韓国の方が多いよなとぼんやりと思ったり…
でた!
大好物。
この意地悪な笑い。

カンヌでスペシャルメンションていう謎の賞をとっているらしい。
なんかわかる。特別に名前だけでも言っておきたくなる気持ち。
ほっとけかったんだろうな、審査員たち…

わかるわかる。
わたしもこれは年間ベストとかには(ギリ)入ってこないけど、でもほっとけないから言及だけさせてほしくなる。

語りたいシーンはいっぱいあるけど、それを書き出すときりがないので、お気に入りシーンをふたつだけスペシャルメンション。
・隣人と隣人のベランダごしの会話
・パリの地下鉄のノースリーブ男
以上スペシャルメンションでした。
マ

マの感想・評価

4.6
めっっっちゃ好き この映画を見れてよかった……………
パレスチナ映画フェスティバルに参加し鑑賞。
誰もが「天国に違いない」と憧れるパリやニューヨークの美しい街並みの中に、彼らの日常が軍事的なものと隣り合わせであることや、普段の会話に人種差別的な表現が紛れ込んでいることなどを、ユーモアを交えて描写している。嫌味のない皮肉が至る所に散りばめられた作品。
そうした細かいところをすっ飛ばして観ても「シュールな映画」として完結するようにはなっているが、パレスチナ人として世界に戦争や貧困の撲滅を訴えたいという監督の気概が伝わってくるような気がした。
SGR

SGRの感想・評価

3.5
こんなに最初から最後まで一貫してシュールな映画は久しぶりに観た。
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