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燃ゆる女の肖像のmのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.5
「on fire」というタイトル通り、タバコ、ろうそく、暖炉、焚火など、火が二人の心情を象徴する役割を果たしていたのが印象的でした。この作品に出てくる火は恐ろしさや危険さを忘れるほどに美しく、特に二人の感情が一線を超えた時の表現はたまらなく情熱的だった。全編通して静かな作品だから、空気感、画面の温度が一気に変わるあのシーンでがっつり引き込まれた。
劇中で挟まれるオルフェのお話に重ねると、何度も振り返ってエロイーズの姿を確認するマリアンヌは、“終わり”を受け入れる覚悟をする代わりに、エロイーズとともに過ごした日々のすべてを何一つ残さず思い出の中に閉じ込めてその思い出とともに生きようとした、反対に意地でも振り返らないエロイーズは、マリアンヌとの日々を“思い出”にしてしまう、過去のことにしてしまうことをいつまでも拒み続けている、のかなと解釈しました。
主な登場人物が全員女性で、それぞれ「女だから」という理由で課される重荷によってさまざまな生きづらさを抱えていたのが印象的。でも、散歩しているときや談笑しているとき、カードゲームをしているときなんかに、女性であることの苦しみから解放されたそれぞれのありのままの姿が少しだけ垣間見えるのが切なかった。
それにしても、ここまではっきりと終わりが見えている恋はつらい…。二人が幸せそうにお互いを見つめあう時間が永遠に続けばいいと願ってしまう。でも、愛を知らないであろう二人にとって自分のすべてを真剣に見つめてくれる人に出会えたことはとても尊いことだと思う。
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