けまろう

燃ゆる女の肖像のけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

『燃ゆる女の肖像』観賞。グザヴィエ・ドラン監督が絶賛していたということもあり、少し苦手な作風かなと思ったが全くそんなことなかった。
全てのシーンが絵画のように美しく特に暖炉のある室内シーンはロココ風油画のよう。描くために観察する立場のマリアンヌ、実はエロイーズからも見られていた。執拗に視線を送っては逸らしをお互いに繰り返しなかなか交錯しない視線。
望まぬ結婚を強いられるエロイーズと女性画家が不遇の時代で画家として生きるマリアンヌ。形は違えど女性であるが故の苦難に向き合う二人。使用人ソフィの妊娠・堕胎を通じて女性であることの生々しさに触れた後、二人は急接近していく。
結婚を強いるエロイーズの母が居なくなってからのマリアンヌ、エロイーズ、ソフィ三人の生活が特に素晴らしく、どこをとっても絵になる。三人で参加した村の祭りのシーン、燃える服を身に纏い焦るでもなくマリアンヌを見つめるエロイーズの力強い姿など圧巻。
その後物語はオルフェウスの神話と合流していき、純白のドレスを着たエロイーズが冥府に囚われるエウリュディケに重なる。その後、マリアンヌとエロイーズが真に再会することはなく、劇場の観覧席で偶然再開したマリアンヌの熱い視線がエロイーズに注がれるシーンで幕を閉じる。視線が交錯しないのは『キャロル』と大きく異なる結末。
熱情を煽るヴィヴァルディの夏も物語中盤でマリアンヌによって中途半端に弾かれた後の再現で構成が見事。唯一交錯したのは「28ページ」って二人の暗号ぐらいか。
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