朝田

燃ゆる女の肖像の朝田のレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
3.9
異次元の超絶傑作。まさしくモダンクラシックと言うべき映画。画面の作り込みは徹底しているがどこまでも役者とショットの強度を信頼した作りで押し付けがましさや息苦しさを全く感じさせない。フィックス主体のカメラとセリフ、音楽を削ぎ抑制された演出が生々しい時間の流れを立ち上がらせる。ミニマルな規模感の中に濃密なドラマが生まれている。カットの一つ一つはじっくりと時間が過ぎていくが、野外から室内へ前触れ無く繋ぐ大胆な省略が映画のリズムを単調にさせない。なおかつ、彼女たちが過ごす時間がいつかは終わる事を強調し、時間の無情さという主題ともリンクしている見事さ。古典的な装いで現代的な主題を語るまさにモダンクラシックだ。こういうミニマルな規模感の映画というのはただ綺麗に纏まりすぎてしまう傾向があるのだが、省略と時折訪れる飛躍がスリルを持続させる。愛の甘美さだけではなく、呪いとしての側面を描いている。何より、現代に改めて視線と視線が絡み合うという映画の原初的なスリルを提示してくれた事に感動する。ラストカットはセリーヌ・シアマの作家としての気骨が溢れていて痺れた。
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