ブルームーン男爵

燃ゆる女の肖像のブルームーン男爵のレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
3.8
全体は静謐で、映像は絵画のように美しい。基本的に自然音だが、祭りでの合唱と、ヴィヴァルディの協奏曲「四季〜夏 第3楽章」が凄まじく鮮烈に印象に残っている。合唱曲は原始主義風ながらモダンな響きだと思ったが、やはり本作用に作曲されたらしい。最初の浜辺のシーンはジェーン・カンピオン監督の映画「ピアノレッスン」ぽいと思ったがらやはり同作が参考にされているとのこと。

印象的なのが終盤エロイーズが「振り返って」とマリアンヌに言い、マリアンヌが振り返ってしまうシーン。ギリシャ神話だと、オルフェは亡くなった最愛の妻エウリディケを冥界の国へ行くが、言いつけに背いて振り返ってしまい、エウリディケを取り戻せない。このシーンはマリアンヌとエロイーズのその後を予感させている。

映画のラストは秀逸。初めて二人が近づいたのは、オーケストラは聞いたことがないというエイローズに、マリアンヌがクラヴィーヤで「夏」を弾くシーン。それと呼応するようにラストはオーケストラの「四季〜夏 第3楽章」が鮮烈に響く。

歴史考証も興味深い。この時代に女流画家?と思ったが、映画終盤でお父さんの名前で世に出していると言っていた。実際、名前が残っていない女流画家はいたそうだ。こうしたジェンダー不均衡の当時の世情もリアルだ。

ただ白状すると静かな映画だし寝不足もあって所々で少し寝てしまった。。そして、どうでもいいが、マリアンヌはエマ・ワトソンに似てる笑。