じゅんP

燃ゆる女の肖像のじゅんPのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.6
例えば『CMBYN』がある種の理想の箱庭として、外側の存在を感じさせない映画だったのに対して、描かれていないはずの外側が見えてきて、不可視の檻の中みたい。

それでいて檻の中の息苦しさではなく、彼女たちの主体性の方に視線が向いているのが印象的。

〈見る/見られる〉、〈描く/描かれる〉の行く先が繊細に映し出され、関係の深化に伴って新しい色を重ねていく様は、終わりが見えていることもあって複雑。

表現=感情の発露で言うと、音楽=炎でもあったり、表現すること自体が「時を留めるもの」としても機能していて、その時の感情を掬い取っては、刻みつけるように雄弁だった。

女中のソフィーの、赤ちゃんに向ける眼差しや、しおれてしまった花がきれいに咲いていた時の様子を刺繍にする姿など、彼女の主体性についての物語でもあるあたりが、数日間の出来事をとても豊かにしている。

彼女たちの手元を〈見せる/見せない〉のように、1つ外側の階層から観ている観客にも、視線の仕掛けが施されていて、それが最大限活かされるラストの締め方まですごかった。
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