Dumbo

燃ゆる女の肖像のDumboのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.2
視線、眼差し、静寂、色彩…
そんな、“感覚”で観る映画。

一切BGMは無く、
セリフの間に聴こえるのは
暖炉で火が爆ぜる音、波の音、風の音…



公開当時、観に行くつもりで
皆様のレビューも何人かの方のだけ読んで、
観てから読ませていただこうと
取っておいたにも関わらず、
結局観に行けなかった今作。
当時の皆様の高評価がとても気になっていて、
配信が始まったら観ようと決めていました。

一方で、
私はフランス映画がどうも苦手…
静かな映画だとよけいに睡魔に襲われそう…
これは絶対寝落ちするな…
と覚悟して観ました💦



たしかに、
とても好みが分かれる作品だと思いました。
でも私は、どちらかと言うと好きで、
意外にも寝落ちする事なく観ました。

特に好きなのは、
マリアンヌが絵を描くシーン。
コンテでデッサン、そして
落ち着いた色の絵の具がキャンパスにのっていく
それをずっと見ていたいと思いました。



会ったこともない人と
当たり前のように結婚させられること、

堕胎を自分たちで試みたり、

女性画家は女性の裸体は描いていいけど、
男性の裸体は描いてはいけない…

そんな、
この時代の女性たちの生きにくさや
閉塞された社会観念も苦しい。



そして、
音楽がこれほど効果的に使われている映画を
今まで観た事がないです。

ヴィヴァルディの『四季』
『春』は有名だから、私も聴いてすぐ“春”と
わかるけれど、
この曲が『夏』だとその時は分からず、
後から調べて分かりました。
『夏』ってこんなに激しい曲だったんだ…


ラストシーンでの
マリアンヌとエロイーズの視線の違いと、
感情の露出度の違いについて、
ずっと考えていました。

最初は、
エロイーズは意識的にマリアンヌを見ないようにしていたと思っていましたが、
もしかすると本当にマリアンヌに気付かずに、
この曲に反応した結果の
あの感情の露出ではないかと思い始めて、
鳥肌が立ちました。

まさにヴィヴァルディの『夏』が
二人を繋ぐ曲だったと言う事ですね…


二人の、
お互いを労わるようなベッドシーンは
男女のそれとは少し違っていて、
私は好きだと思いました。


幽霊の演出がちょっと謎だったのと、
鏡の使い方には
ちょっと笑ってしまいましたけど。


最初から最後までずっと切なくて、
やりどころのない二人の感情が、
セリフが無いシーンでも
押し寄せてくるようでした。

そこにアクセントを添えていたのが、
メイドさんの存在。
彼女もまた訳ありのようだけど、
このメイドさんとも仲良くなって、
三人で笑い合うところが、
唯一救われる気がしました。



28ページの秘密…
そしてヴィヴァルディの『夏』
これが、二人の心に刻まれた愛の記憶で、
会えなくなっても永遠に、確実に存在する
確かなものだと思いました。

男でも女でも、
人生で忘れられない人がいると、
その後のその人の生き方を
少なからず左右するんじゃないかと
最近思うのです…

マリアンヌはきっとこれからも、
自分に正直に生きていきそうだけど、
エロイーズはその後どんな人生を
生きたんだろう…





エロイーズ役のアデル・エネルが
フローレンス・ピューに似てると思ったのは
私だけでしょうか?




Portrait de la jeune fille en feu
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