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燃ゆる女の肖像のJTのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
5.0
光は残像に、後悔を記憶に
想いは愛に、一瞬を永遠に
炎を灯して、嵐をおこして

2020 . 20
  『Potrait Of A Lady On Fire』

18世紀のフランスで《炎ゆる貴婦人の肖像》を描いた画家のマリアンヌはその絵にうつるエロイーズという女性との愛の記憶を巡らせ物語は始まる

知ってしまった、感じてしまった、なんて稀な作品
21世紀最高の愛の映画だと見紛うことはないだろう
劇伴の流れない映像から聞こえるのは自然の音だけ
なびく風、うねる波、焚火のパチパチと弾ける薪の音
こんなに静かなのに、燃えさかるような激しさがある
その燃えさかる炎の中に、永遠と呼べる静けさがある
きっとこの映画、この感情は、記録ではなく記憶だ
その表現とその表情も、あの秘密とあの沈黙でさえ
頭の中から身体の芯まで、きめ細かく刻まれている
互いに観察し、幾度となく輪郭を描いては塗り立てる
あなたがわたしを見つめてわたしはあなたを見つめる
照れ隠しに噛む唇、困ったときに額にあてるその左手
内部から外観は変化し、輪郭は明瞭に浮かびあがる
筆を滑らせるように優しく惜しみなく相手を吟味する
灯された炎はいつか消えるから、後悔しないで刻んで
記憶を、静寂を、言葉を、仕草を、感情を、慈しんで
何度も何度も記憶の中の亡霊と出会っては想いだす
この世界であなたとわたしだけが知る愛の秘密を

ヴィヴァルディと28
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