つるみん

バクラウ 地図から消された村のつるみんのレビュー・感想・評価

4.0
【ロバが無事に帰って来れるように】

さて、この映画。レジスタンス賛歌のSF西部劇と言っておこうか。型にハマったジャンルで分けるのは非常に難しく、ただ内容自体は非常に単純で、実にエンタメ。貧富の差からくるブラジル社会の腐敗を素直に映した寓話である。

バクラウという小さな村の最長老の女性が息を引き取る。それをきっかけにおかしな現象が次々と起こる。給水タンクに穴が開いていたり、ネット上からバクラウの村が消されていたり、住民の変死体や未確認飛行物体が飛んでいたり。謎を呼ぶ謎。これは一体…。

ある意味カルト的な映画。そしてS・クレイグ・ザラー監督味が表面的に表れているユルさとグロの緩急。時に挟み込むユーモアがまたこの映画の隠し味となっている。また主人公を絞らない、言ってしまえば小さな群像劇という形を取ったのも大正解。村の住人の過去などは、彼らの表情や歴史博物館にて端的に説明できているのも素晴らしい。

前述した通りブラジル社会の腐敗を描いたテーマであるが、決して内輪じゃないのが良いし、その部分においては『パラサイト』に酷似している。

ただ個人的にはもう少し近未来(というか富裕層)の意識付けをさせても良かったのではないかなと思う。〝謎〟をどこまで引っ張るかが本作の難しい部分であるので、そのタイミング、比率は重要なところ。十分なカタルシスを味わう事は出来るが、もっと増幅させる事も可能だっただろう。ただこれもまたただのB級グロ映画にさせない為の一定の線引きがあるから難しいところだ。

『ミッドサマー』みたいに大衆ウケはしないだろうが、映画好きの一部で盛り上がること間違いなしの不思議でおかしな村、此処にあり。
つるみん

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