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キーパー ある兵士の奇跡のmatchypotterのレビュー・感想・評価

キーパー ある兵士の奇跡(2018年製作の映画)
3.9
《スポーツの映画》、Vol.10。サッカー①。

バートトラウトマン。
1950〜1960年代に実際にマンチェスターシティーで活躍したゴールキーパーの話。

もともとドイツ人。
1945年に第二次世界大戦が終わりイギリスで捕虜に。
そこでたまたまお遊びしてたら出入りしてた業者のおっさんの目に留まり、収容所からレンタルするかの如く、地元チームのキーパーに。
その業者のおっさんがある意味、彼の人生の転機を作る。

そこから徐々に活躍が広がり、有名クラブの監督の目に留まり、スカウトされ、入団テストに合格して移籍。

彼の献身的な活躍、というか首の骨が折れてる事態でも試合を続けて、カップ優勝を果たす。
後に、彼はイギリス人以外での年間最優秀選手となり、国からも栄誉賞を授かる。

そんな話だけ聞くと、アメリカンドリームみたいな頂点を極めた輝かしいスター選手。

だが、この戦後間もないイギリスの地においてドイツ人が生きることの難しさ。
いくらキーパーがうまくても、決して受け入れてくれない偏見。誹謗中傷。

戦争の傷痕残るこの時代で「イギリス人を苦しめたドイツ人」が人前に出て活躍することの辛さ。

彼もまた戦争で傷付き、戦争での出来事を引きずりながら、心の中で何とか折り合いつけながら前に進もうとする姿。

そこにイギリス人からの“戦争が辛かったことのすべて”を背負わさんとするかの如くの扱い。

それらと向き合いながら、数少ない理解者に心救われながら、物理的にも精神的にもボロボロになってもゴールを守り抜き、逃げずに戦った1人のキーパー。

彼のとある戦争での出来事が、回り回って彼の人生に影響してるような話もまた、戦争の重さを残す。

ただ、そんな辛く悲しい背景もありつつ、彼の才能や頑張り、献身的なプレーが、身近な仲間の心を変える。
チームが変わってもそれは変わらず、サポーターの心を変え、いつしか世論を変える。

戦争の爪痕。偏見や差別。
この時代だからこそ、個人の意思と世界的な大きなうねりの中での複雑な心境がある。

そんな中であってもスポーツは、国を越え、政治を越え、戦争を越え、人の心を越える。

派手で単純なスポ根映画にはない、深いドラマとこの時代を生きた人たちの複雑な背景もあって見応え抜群だった。
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