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キーパー ある兵士の奇跡のSPNminacoのレビュー・感想・評価

キーパー ある兵士の奇跡(2018年製作の映画)
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英国で捕虜収容所にいたドイツ兵GKが辿る数奇な運命。なんとシティにこんな逸話を持つ選手がいたとは知らなかった。
映画は元ナチスの兵士トラウトマンが「選択の余地がなかった」戦時中の罪とフットボール、憎しみと赦しの間で葛藤する苦悩を描く。彼をチームに迎え入れた監督にまず驚くけど、やはり国民感情は穏やかじゃない訳で。「ノー」はイエスかもしれない、と自分も消極的加担してしまった戦争犯罪に苛まれ続けるトラウトマン。それでもプレイできるチャンスが、失いかけた人間性回復へのチャンスだったのかもしれない。
ウォームトーンで撮られた長閑な田舎町と、決して消せない罪の意識が暗いコントラスト。監督の娘とのロマンスはお互い「籠から逃げた鳥」に重ねられ、ダンスとフットボールとバンド(音楽)がやっと訪れた自由を軽やかに演出。英国映画らしいウィットやロマンティックな場面もある。シティ入団後も波乱万丈すぎるのだが、それも全部一人で受け止めようとするのは、受け身のGKだからこそだろうか。デヴィッド・クロスの繊細で優しそうな顔つきが最大限活かされてた。
英国フットボール映画といえば、クライマックスはFAカップ。当時のスタジアムやレトロなジャージなど再現したノスタルジックな雰囲気が良い。終盤のまとめ方はちょっと説得力に欠けるというか、端折って脚色されすぎな気がした(『コリーニ事件』観た後だと余計に…)。
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