現在フランスにはアフリカ系は多数いて、人種差別問題、ネオナチなど排他主義による移民問題、イスラム原理主義者のテロなどはニュースで認識していたわけだが。
いずれもヨーロッパのご多分に漏れない、現在世界にある“一般的な問題”として頭の、心の中で自動処理してしまっていた。
なにせ花の都パリである。シャンゼリゼ通りや、エッフェル塔や、美術館など華やかなイメージが先立っているのんきな日本人つまり自分に、強烈な銃弾を打ち込んでくる一作だった。
人種や職業いかんにかかわらず、全員がほぼ等しく貧しい。これがアメリカだと黒人グループのボスや、警察と通じるヤクザは少なくてもある程度富めるものとして描くわけだが、そういった既成のプロトタイプを覆す。
それぞれのグループで敵対はあるものの、交流や家族関係をある種執拗に描くことによって、むしろやるせなさや悲しさを感じることが出来た。
ラストが素晴らしい。ぎりぎりの救済に安堵する。