じぇれ

レ・ミゼラブルのじぇれのレビュー・感想・評価

レ・ミゼラブル(2019年製作の映画)
4.5
【パリの闇を炙り出す冷静と情熱の演出】

パリ郊外に赴任した警官は、荒廃ぶりに戸惑いながらも己の正義を貫こうとする。しかし、些細な事件をきっかけにパンドラの箱を開けてしまい……

本作はミュージカルでも有名なヴィクトル・ユゴー作『レ・ミゼラブル』の再映画化ではありません。その舞台にもなった街が現在いかに悲惨な状況(レ・ミゼラブル)かを描いた、リアルな社会派映画です。

そのため全編を通じて社会的弱者たちの彷徨う魂が描かれますが、決してヒステリックに社会を糾弾するのではなく、極めて冷静かつ情熱的に社会の歪みを浮き彫りにしていきます。

実際全ての登場人物は、彼らなりに清濁併せ飲みながら精一杯生きているんです。単純明快な悪人は一人としていません。だからこそ、社会に充満する負の感情が暴発した瞬間、私の心はフリーズ。ラスト30分間は安易な言葉で綺麗に感想を語るのを許さない、やるせなくも強烈なクライマックスに仕上がっています。

正直なところ観ていて心地よい映画ではありませんし、スッキリできる結末でもありません。その代わり、鑑賞後の余韻はかなり深い!かの傑作『憎しみ』をも超えたやるせなさが私の心を覆っています。

ちなみに、これを執筆しているのは鑑賞から約半日が経った時ですが、未だに本作への答えが見つかっていません。う〜ん、私のような一般人に何ができるのか全くわからないんです。それでも考えていかなければならないのは、これが対岸の火事ではないから。格差の拡がる日本にもこの問題は確実に存在します。私たちにできる最初の一手は知ることです。是非ご覧ください。
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