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レ・ミゼラブルのkyokoのレビュー・感想・評価

レ・ミゼラブル(2019年製作の映画)
4.5
貧困に苦しむ移民層に対する警察権力の暴挙かと思ったら、構造は恐ろしく複雑だった。

アフリカ系(っていってもひとつじゃない)移民、ムスリム同胞団、ロマのサーカス団……複数の民族がお互いに監視し合う「無法地帯」は、そのパワーバランスの上に成り立っている。
警察はそのバランスをうまいこと利用しながら権力で抑圧する。

混沌の世界で生き残るには、言葉よりも暴力が有効であると、生まれたときからすり込まれてしまった子どもたちは、大人同様に聞く耳と下げる頭を持たない、まるで獣のようだ。

ラスト数十分は緊張感で息ができなかった。
避けられなかった怒りが次から次へと襲いかかる。

下ろした銃口の先には絶望しかないんだろうか。


最近の映画はもうドローンなしでは作れないのかい、という個人的批判は撤回。
これはドローンという「凶器」なしでは成立しえない作品だ。
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