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レ・ミゼラブルのrollinのレビュー・感想・評価

レ・ミゼラブル(2019年製作の映画)
4.0
アタック・ザ・ブロック
(ジャケ詐欺注意報発令中)

トリコロールの真ん中が白色だったのはいつの日か。
かつてレミゼの舞台として描かれた街は、犯罪対策班BAC、団地トライブ、ムスリム同胞団、さらにはサーカス団としてやって来たロマたちが、一触即発の状態で相席するスラムと化していた。
興味深いのは、アフリカ系でさえ一枚岩ではないというスパイク・リーホイホイな状況。もちろんルーツに対する連帯意識はあるだろうけど、彼らを隔てた後天的要素=この街に蔓延る超面倒臭い問題を端的に描写していてスマートだった。

映画の構造としては、“BACに新しく配属された主人公ルイスの長い一日”ってな感じで、『トレーニング・デイ』や『エリート・スクワッド』、『エンド・オブ・ウォッチ』といったひと昔前のストリート系ヒリつき巡回モノを彷彿とさせます。

冒頭、サッカーW杯の熱狂で映画のビートをあげまくってから、クライマックス直前まで、一切チルアウトすることなく緊迫感が持続していく現象。まあ、上記の名作たちと同じ作りなんだから当たり前なんだけど、この感覚は何回味わってもたまらん。
あと、同時にこの手のやつにありがちなツッコミどころとしては、「配属初日にイベント目白押し問題」というのがありまして、今作ではそれがかなり顕著&ご都合主義過ぎて、正直ちょっと萎えました。

技術面に関しては、『24』が流行った当時のような、カクカクズームというくそダサい技巧を久しぶりに見られる郷愁感溢れる作品。ドローンとかSNSが出て来なかったら、10年前の映画と錯覚しそう。

主人公たちや各勢力の求める聖杯が次々と変化していくのがおもろかった。嘘をつくとさらに嘘を重ねていくヤツ。
市長&赤レンジャーといった団地トライブの独特な感性は大好き。もっと見せろ。
ベストシーンはサーカスのアレですね。あの場面の映画全体に対する異物感スゴい。逆に終盤のアレは、観客を驚かせることが念頭にあり過ぎたのか、そこに至るまでの描写が不足していて、何だかなぁ‥だった。映画の終わり方は良かったけど、結末を丸投げするなら文章の引用もせん方がカンヌっぽいしCOOOLやと思うわ。

名作、傑作という類いではないけど、見応えのある作品。
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