回想シーンでご飯3杯いける

レ・ミゼラブルの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

レ・ミゼラブル(2019年製作の映画)
4.0
フランス映画に於いて、ここ20年ぐらいで訪れた大きな変化と言えば、非イケメンが主役の良質な作品が増えた事、そして移民問題を背景にした作品が増えた事が挙げられると思う。カンヌ映画祭で「パラサイト」とパルムドールを競った、この「レ・ミゼラブル」は、その移民問題に鋭く切り込んだ、かなりショッキングな作品だ。

有色人種の比率が高くなった近年のフランスでは、そこから生まれる雑食的な文化の誕生など、文化面で大きな発展を生み出す一方で、一部ではフランスでの生活に馴染めず、特定の地域で孤立したコミュニティーを形成する層を生み出し、治安の悪化を招いている。

本作の舞台となるモンフェルメイユも、非常に治安が悪い地域のようで、犯罪が日常化する中で、子供達の教育レベルも悪化の一途を辿っている。そんな子供達の中の1人が起こした些細な事件が大きな騒動に発展する様子を描いた本作は、スパイク・リーの「ドゥ・ザ・ライト・シング」に似た部分を感じつつも、移民達が独自の文化を持つにも至らず(例えば音楽が殆ど聞こえてこない)、最低限の生活を強いられている点で、より厳しい現実を痛感させる。

暴力シーンが多く、その強度だけで引っ張っている側面もあるが、その中で、とある動画を収めたSDカードが、罪や贖罪のメタファーとして浮上する展開が秀逸。ここの下りはもう少し引っ張って欲しかったように思う。