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レ・ミゼラブルのncccoのレビュー・感想・評価

レ・ミゼラブル(2019年製作の映画)
3.5
最初から最後までハラハラドキドキさせられる映画。
映画は初めの数分間で全体を予感させるというけれど、この映画もそう。
冒頭の、サッカーに狂乱する民衆たち、白人も黒人もみんながフランス国旗を掲げて熱狂する、ただそれだけのシーンのはずなのに、もうザワザワが止まらなかった。そこから少年イッサが巻き起こしたちょっとしたイタズラが、街全体を巻き込む大きな騒動になっていく様が、ドキュメンタリータッチで描かれていく。

見せ所はいくつかあったと思うけど個人的に大きく印象に残ったのは下記の3つ。
1.イッサを追い詰める警察官をドローンが見下ろす俯瞰シーン、冒頭から登場する2人の少年がここで初めて交差する。なんとも映画的な快楽のある序盤の盛り上がりポイント。
2.ことが終わり、それぞれが一日の出来事に想いを馳せる中盤のクライマックスシーン。
3.観る者に問いが残されたまま、揺らぐ炎に画面が黒く塗りつぶされるエンディングシーン。

いくら想いを傾けて話し合ったとしても超えられない非情な壁、どちらが正しいでも悪いでもない、でもただ生きるために選ばざるを得ない道。

「友よよく覚えておけ、悪い草も悪い人も居ない。育てる者が悪いのだ」
胸に強烈に刺さるユゴーのセリフに、「ただありのままを見てくれ」という監督の悲痛なメッセージを感じる。延々と巡り続ける負のスパイラルに解決策なんてない。わたしたちにできることは、この現実を受け止めることだけだ。
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