Koutaro

家族を想うときのKoutaroのレビュー・感想・評価

家族を想うとき(2019年製作の映画)
4.3
ビターエンドの代表格と呼んでいいほどに、とにかく観ていてやきもきする映画。
後味は非常に悪いが、バッドエンドと呼べるほど決定的な結末を迎えているわけではなく、だからこそ、非常に心がざわざわする。ただ、このもやもやとした感情を抱かせることが、この作品の最大のテーマだと思われる。

概ね一般的なファミリー映画の形を取りつつ、低所得者層に落ちぶれてしまった一家の不穏な関係性が描かれていくが、物語の序盤から、主人公にとって間違いなく落とし穴になるであろう伏線があまりにもあからさまに張り巡らされていく。
普通の物語なら、そんな地雷を適度に起爆しつつ主人公が乗り越えられるような構成になるはずだが、本作では最後の最後までそれが処理されることはなく、それどころか新たな伏線がどんどん張られていき、主人公ががんじがらめになったところで唐突に物語が打ち切られてしまう。
ジェットコースターの最後の山場で急にレールを取り外されたような感覚で、観ている側としては非常にストレス。
ただ、だからこそ、この作品のテーマが活きてくる。これをハッピーエンドで終わらせてしまっては、全く意味がない。

この映画を日本で公開するにあたって一番苦慮されたのは邦題をどうするかだったのではないか。
正直いいタイトルとは思えないが、これに関しては原題があまりにも秀逸すぎる。さすがに、これを超える日本語のタイトルを付けるのはまず不可能。
無理に和訳する必要もなかったのでは? という気がした。
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