三郎丸

家族を想うときの三郎丸のレビュー・感想・評価

家族を想うとき(2019年製作の映画)
4.2
【幸福への残酷な選択肢】

ゼロ時間契約労働者という社会問題それが影響する家族崩壊を描くヒューマンドラマ をケン・ローチ監督は鋭くエグる。

お話は、
ターナー一家の主人・リッキー(クリス・ヒッチェンズ)の日常から始まる。イギリスのニューカッスル・アポンタインに住むリッキーは銀行の貸し付け騒ぎの影響で住宅ローンが破綻し借家住まい…自宅を失うが住宅ローン返済は残る。
建設業界を渡り歩きそれらを返済と家族の生活費に充ててきた。
妻アビーは介護福祉士。介護者の自宅を車で移動する毎日… 所属先の社用車などもなく、移動は自分で何とかしなければならない。
そんな両親の子ども16歳の長男セブ(リス・ストーン)と12歳の娘ライザ・ジェーン(ケイティ・プロクター)がおり、セブは成績優秀者だったものの
【グラフィティ】
にハマり学校を休みがちになっていた。
ある日、身体の限界を感じたリッキーは友人の紹介である配送会社の面接を受ける その会社の管理人であるギャビンは
【個人事業主としてフランチャイズ契約を結ぶ】
と説明し、荷物の遅配や誤配などは【罰金対象】
となることを突き付けて契約を結ぶものの、結果的に家族に様々な出来事が及び主人公リッキーにペナルティが課せられる…

まず、足枷になっているのは
【ローン地獄という不幸】
それを主人公が何とかしようと足掻くから
【目先のことしか見えなくなり、家族の変化も気付けなくなっている】
寄り添ってくれる人たちがいるにもかかわらず、結局
【カネ】
のことしか頭にはない。最初から最後まで…
こういう人、日本にも沢山居ます。
【描いた未来に家族みんなが求める幸せがあるのか?】
を主人公は見失ってしまっていたように思います。
【家族の生活のためにという大義名分】
の前に、家族の変化に気付けないほどの余裕がないことは家族にとっては不幸以外のナニモノでもない。
・長男が家族写真にスプレーでバツをしていることがなにを指すのか?
・娘が泣きながら無くなっていた主人公のクルマのキーを手渡す。
・温厚だった妻が主人公の雇い主を罵倒してしまったこと。

家族の危機サインに気付けない…

【心に余裕がない人たち】
にこそ是非オススメです。
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