バルバワ

家族を想うときのバルバワのレビュー・感想・評価

家族を想うとき(2019年製作の映画)
4.7
年の瀬だからここから怒濤の隠れシネシターン!いいんだ、いいんだ!身を粉にして遮二無二働いとるんじゃ!

社畜のちょっとした楽しみ…それが隠れシネシタンだッ!

いやぁ…映画が胸ぐらを離してくれない。

あらすじは主人公リッキーとその妻アビーは二人の子ども達の為に懸命に働いているが働けば働くほど苦しい目に遭う…的な感じです。

まず、ケン・ローチ監督作を初めて映画館で鑑賞しました。今作を観るにあたって前作の『わたしは、ダニエルブレイク』を観ましたが「何故、私は今作を映画館で観なかったッッ!」と、後悔した次第です。

主人公家族の父ちゃんは職場では従順なのに短気で「俺が悪いんか」が口癖でって…俺じゃないかい!
まるで将来の自分を観ているようで身につまされました。

とにかく冒頭で父ちゃんは運送会社に正社員ではなく個人事業主として契約を交わします。私は「いきなり社長?いいじゃん!」とか暢気に構えていましたが蓋を開ければ1日14時間労働で、福利厚生もなく宅配に使う車は自腹、病欠や止むを得ない事情でさえ休みを取ると1日につき約14000円の罰金等々…何が事業主という感じなのです。

母ちゃんもホームヘルパーのパートをやっているのですが、仕事はもちろんキツい上に、いつでも呼ばれるというハードモードに輪をかけて、しかも1日何軒も回らないといけないのにある理由でバス移動でもちろん自腹という地獄。

だから夫婦共に家でくつろいだり、子どもと接する時間はほとんどないから息子はグレて、娘は不眠症になるというまるでこの世の不幸の幕の内弁当のような状態に陥ります。

鑑賞の間ずっとツラいのです。ただ、何ヵ所か笑えるシーンもあり、劇場内でも笑いが起こっていました。また、話の中盤に家族で父ちゃんの車に乗るシーンはこの映画の幸せのクライマックスという感じでした。

というか、この主人公家族は上手くいっていないだけで、互いを想いあっている良い家族なんですよ!息子はグレているけど基本的に好青年だし、娘ちゃんも家族のことを大好きというのがよく伝わってきます。皆が皆家族を想っているから噛み合わなかったり決定的や誤解をするんですよ…。
そんな切実な想いを現実や社会が理不尽この上ない方法で搾取していく…しかも実際起こっていることだというのがやりきれない。

決して日本も無関係な話ではないので多くの方に観ていただきたいし、なんなら日本でリメイクしていいんじゃないですかね。父ちゃん役は『カメラを止めるな!』の監督役で有名な濱津隆之さんがぴったりだと思います、あの哀愁はなかなか他に見ないです。

そして、エンディング…映画ってハッピーエンドでもバットエンドでも大半は鑑賞後、劇場が明るくなると現実に戻るですが、今作は戻れなかった…。
作品が監督が「まだ終わってねぇからな」と、私の胸ぐらを掴んでいるような感じがしました。


そんなことを考えると冒頭の文章をリッキーの嫁さんに見せたらスマホをケツに突っ込まれますね、確実に。

年末に来てまたベスト級の作品に出会えました、凄かった…。
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