YACCO

家族を想うときのYACCOのレビュー・感想・評価

家族を想うとき(2019年製作の映画)
4.0
10月くらいにテレビで是枝監督とケン・ローチ監督の対談を見て、鑑賞しようと決めた今作。
「弱者を単なる被害者としては描かない。恵まれた側にいる人が最も嫌いことは、弱者が力を持つこと」(確か、こんな感じ)といったケン・ローチ監督の映画は、心してみなければならないと覚悟はしていたものの、なかなかずしりとくる映画だった。

映画にエンタメを求めたり、手法やら技法やらを求める人は見ないほうがいい。
「わたしは、ダニエル・ブレイク」もそうだったが、これはケン・ローチ監督からの告発映画だ。今のイギリスの姿を浮き彫りにし、それを世に知らしめるための映画なのだろう。
実際ケン・ローチ監督は「映画監督として心がけているのは『搾取や貧困をはじめとする弱者が置かれた現実をどう伝えるか』です」と言っている。
弱者は伝える術をもたない。確かにそうだ。そして、なかったことにされる。それはどこにおいても変わらない。

私の周りにも現在進行形でいわゆる「ブラック企業」から抜けられない人がいる。
身体を壊せば、仕事をどうするつもりだ、責任感がないと皆の前で言われる。休みが欲しいと言えば、仕事が終われば休んでも帰ってもいいという。時間内に業務が終わらないと、能力が低いとののしる。本作は異国の世界の話なのに、これほどまで心に来るものがあるのは、日本の現状もあまり変わらないからなのだろう。
辞めてしまえばといっても、家族のことを考えると、次の仕事が見つかるのか、といって思いきることもできない。
そうして、すり切れた心と身体を引きずりながら会社に向かう。まさに、今作の家族とかぶるところがあり、正直みていてとてもきつかった。

せめてラストに何か光を感じられたらいいのだけれど、あのラストから私が想像する未来の姿にはまだまだ光が届く様子は感じられず。

この映画が見るべき人に、届くべき場所に届くことを願わずにはいられない。
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