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家族を想うときのncccoのレビュー・感想・評価

家族を想うとき(2019年製作の映画)
3.5
「ダニエルブレイク」に引き続き、どこまでも行っても救いのない話。
ケンローチはいつからこんな怒りを抱え、ぶつけるようになったのだろう?今だからこそ「天使の分け前」のユーモアと優しさがひとかけらでもいいから欲しい。

これを観て「現実はつらい」と思ったところで何にもならないし何も変わらない。「社会に問題がある」といったところで誰も社会は変えてくれない。けれど、自分が少しでも家族のために、自分を「想ってくれる」人たちのためによくあろうとすることはできる。人は変えられないけれど、自分はいつだって変われる。辛い世の中だからこそ、家族を大切にしようというメッセージを強く感じたし、そうありたいとひしひしと思った。

家族のためを想ってやったことが家族を粉々にしていく。優しい妻が、気丈な娘が、泣き叫び心のひび割れをあらわにするとき、思わず涙した。息子のささくれだった心も、わかりすぎるほどわかるけれど今回ばかりは親の気持ちにより感情移入してしまって、自分も歳とったんだなぁと、しみじみ。

そして家族においての母親の役割について思いを巡らせてみる。本作のお母さんもホントに優しくていい人で、なにより喋り方がゆっくりで人のイライラを緩和させる力を持っている人である。旦那が、子供が、感情的になったときほど、家族を中和し、糊付けしなおすのは良くも悪くも母親なんだよな。そのためには、ある程度の経験値と諦めと、心の余裕が必要。自分はあのシーンであの対応ができるだろうか、、そんなことを考えながらこの家族の行く先を想った。
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