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家族を想うときの2MOのネタバレレビュー・内容・結末

家族を想うとき(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

働けど働けどなお我が暮らし楽にならざり──。

それは現代のお話。どこか遠い国の誰かを他人事のように憂いてばかりもいられるはずはなく、我が事に差し迫って刮目すべき家族の肖像である。

フランチャイズという名の奴隷契約。自己責任という名の思考停止。記号化された悪魔の言葉が当然のように蔓延る現代社会。新自由主義経済のもとに地盤沈下する市民生活、荒んでいく人々の心は闇を一層濃くするばかり。

一貫して労働者階級に寄り添った映画を撮り続け、希望の光を灯し続けたケン・ローチ。しかし、ついに本作においては、一条の光さえも映し得ない。無情にも唐突なエンディングを迎え、映画は暗転してしまうのである。
朝日が眩しくドライバーの横顔を照らしているが、それが前途に輝く未来でないことは誰の目にも明らかである。

「何かが間違っている」
という確信に苛まれながら、それでも泥沼をもがき続けるしかない不条理よ。怒りのやり場さえわからない、もはや悲しみだけが広がっていく。
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