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家族を想うときのGenaのレビュー・感想・評価

家族を想うとき(2019年製作の映画)
4.3
唸った。腹がたった。あまりにも現実社会、私の現実そのもので。

不況に煽られて望むとおりのキャリアを築くことができなかった40代の夫婦。
夫が新しい仕事の話を持ってきたところからこの話は始まる。

その新しい仕事というのが、新興企業の良くできた今っぽい事業で、災の元だった。
宅配事業の「フランチャイズ」を持ちかけ、個人事業主として雇う。親会社と提携して荷物を運ぶ仕組みなんだけど、シフト管理もなにもあったもんじゃなくて、実際は責任と初期コストを各人に丸投げするようなひどい仕組み。保険もあってないようなもの。

まるで仕組みとしては日本を代表する搾取構造を持つコンビニのようだったし、それでもいい条件だと思って懸命に荷物を運び続けるお父さんは荷物の激増によって大変な量をこなしてるヤマトとか佐川の人のようだった。

お母さんも人の命がかかっている介護の仕事を一生懸命やっているけど、それはまったく稼げるような種類ではなく。

二人の子どもたちは異変を感じとっていて、それはそれぞれの行動に反映され始める。

思い合っているのに崩壊していく家族。これほどハラハラする筋書きってないよね。

救いだったのはお母さんがすごく優しいことと、子どもたちは両親とは違う価値観を持っていそうだったこと。
必死に働かなくてはというふうにはならず、客観的に両親をみて、この働き方に疑問を持っている。
そうそう、世代と価値観を変えていかないとね。おかしいことにはおかしいって言わなくちゃ。
そういう意味では子供が大人を守れることもあるはず。

これは私の問題だけど、劇場で一緒に見ていたのがとっくにリタイアしたような老人たちばっかりだったのに理不尽に腹がたった。
高みの見物のつもり?みたいな。あなた達の世代はこんなグローバリゼーションの波に揉まれて搾取されなかったんだからラッキーだったよね、と思ってしまった。
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