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マティアス&マキシムのymdのレビュー・感想・評価

マティアス&マキシム(2019年製作の映画)
4.0
グザヴィエ・ドランの映画をちゃんと観るのは『マミー』ぶりなのでずいぶん久しぶりだし、彼が画面で演技しているのを見るのは『エレファント・ソング』ぶりなのでこれもまた久々だった。

彼の映画は一貫してLGBTQ(近年どんどん記号化が複雑になっているね)を取り上げているわけだけど、今回はもう一つの彼の大きな命題である「家族の在り方」についても深く掘り下げている。

今作は男性同士のキスシーンがシンボリックに取り上げられてはいるものの、それはもうドランにとって(というより社会の流れとして)ビビッドな出来事ではなく、あらゆる人に通じる普遍的な愛の形として観ることができるし、実際にそのように撮っているようにも感じる。

むしろこの映画は一方の「家族の在り方」の方が重たく暗い光を放っている。
マティアスとマキシムという二人の主人公は対照的な家庭で育ったように見えるが、どちらも風景として仄めかされるだけで明確な説明はない。

ただしどちらも重大なトラブルを抱えており、それが若い青年たちの枷となり(あるいは舵ともなって)、大きな影響を及ぼしている。自分で金を稼ぎ自立した生活を送れるようになったとしても、それが無くなることはない。そのジレンマを描くようになったのはドラン自身が30歳を越えたことも影響していたりするのかな。

繊細な絵作りと台詞の余白、確信めいた音楽使いは相変わらず冴えているけど、もはやそういった手法は様式美になっているのでそこに驚きはない。まあそのクオリティを打ち続ける打率の高さはスゴイのだけど。

作家性の高さと大衆的な面白さを備えた『トム・アット・ザ・ファーム』や『わたしはロランス』の方が傑作だけど、これも非常にクオリティが高く、これまでの名作群に引けを取っていなかった。
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