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マティアス&マキシムのペインのレビュー・感想・評価

マティアス&マキシム(2019年製作の映画)
4.1
“拝啓、リチャード・リンクレイター様”

“ドランは初日!”と意気込むドラン大好き彼女と観に行きたかったのだが、予定が合わず…

翌日に男友達とレイトショーで二人で鑑賞(※『君の名前で~』に続きLGBTQ映画を男二人で観るのは2回目ですが、変な雰囲気には全くなりませんでしたw)。

さてと本作ですが、前作の『ジョンF~』が初めての英語作品、ハリウッド進出作品ということでドランにとってはややアウェイ試合だったわけですが、本作は母国で実際に親しくしている友人達と仲良く和気あいあいとリラックスして撮っているのがビンビンに伝わってきて、とてもホーム感が強かったですね。

ドランというと毎作品のように毒親が描かれますが、本作でもメインではないにしろ、やはり描かれていましたね。相変わらず怒号の飛ばし合いが炸裂していて、ドラン演じるマックスが拗ねてトイレに閉じこもったときに母親が、“トイレ野郎!”、“トイレのマックスくん!”みたいな散々な言い様で少し笑っちゃいましたごめんなさい(笑)

笑っちゃったといえば物語後半のパーティーシーン(※早回しも印象的でしたね)。色々あって友人達たちが盛り上がるリビングとは別室で“そういう関係”になった主人公マット&マックスの二人のキスシーンと、突如雨が降ってきて盛り上がっていた友人達たちが洗濯物を取り込むシーンが交互にスローモーションで写し出される演出は笑ってしまいました(笑)また、そのシーンでの曇りガラスの使い方、音の入れ方は秀逸でした。

とはいえ、やはり今までのドラン作品に比べると激しい演出は抑えめで、男同士のわちゃわちゃ騒ぐ日常描写が多く、起伏も少ないので退屈と感じちゃう人もいるにはいるのかなと感じました。

でも私はいつも以上にそのドランの“時間”の切り取り方に親しみを感じた。どこかリチャード・リンクレイター的ですらあるというか、実際にドランのお気に入り映画リストにはリンクレイターの『エヴリバディ・ウォンツ・サム!世界はボクらの手の中に』が入っていて、あの一見脈略のないダラダラした男同士のわちゃわちゃ感はそこからきているのかな~とも思いました。

実際、ドランのインタビューなんかを聞いても本作で男性同士の友情を描いたのは、男性グループが登場するような作品を観て感銘を受けたからと言っていました。

ラストの終わり方もいつになく爽やかというか気持ち良くて、ドランも30歳を迎えてウォン・カーウァイ好きすぎて仕方ない少年からまた新たなフェーズに入ったのかなと思います。これからも彼のリラックスした”ありのまま“の作品が観たい次第。
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