ラブロマンス映画のような、甘い言葉もロマンチックな会話もない。
でも確実に互いに相手を思い惹かれあっているマティアスとマキシムが切なくて美しい。
頬の赤い痣が血の涙に見える。
行間の説明をオミットしたせいでキャラクターの心情は見えにくいけど、その「言葉じゃ説明できない」部分こそ、人を好きになること、愛することの本質なのかもしれないと思った。「好きになる理由」を好きになるわけじゃない。
ドラン作品、これだけ有名になっても映画にそこはかとなく漂うインディーズっぽさがたまらん。手持ちカメラの感じとか、ブツ切りのカット割とか、音楽の使い方とか、大胆なのに繊細で、チープなのに上品で、そのデザインセンスに脱帽だ。
いままで観てきた作品の中で、今回のドランがいちばん飾り気がなくて自然体で魅力的に感じた。役者としても監督としても脚本家としても、どんどん魅力的になっていくな。そしてまだ31歳なんだもんな。
仲間たちと車の中で大合唱するシーンが好き。