たく

アトランティックスのたくのレビュー・感想・評価

アトランティックス(2019年製作の映画)
3.6
セネガルを舞台に、格差社会における許されぬ恋路のなかで離れ離れとなった男女二人の恋の顛末を描いてて、いいかげん終盤まで意味が分からなくて何とも不思議な映画だった。邦題が複数形になってるのは、おそらく後半に登場する謎の人物たちのことを海(大西洋)の魂に見立ててるんだろうね。全編に海の光景が何度も挿入され、特殊効果は使われていないのに霊的な雰囲気が漂うのが印象的だった。

冒頭でビルの建築工事の未払い賃金を要求する工事現場の若者たちが登場し、ビルのオーナーが富裕層ということが後半で分かり、これがセネガルの経済格差社会を象徴してるんだね。主人公のエイダには富裕層の婚約者のオマールがいて、世間的には裕福な彼と結婚するのが一番幸せな道にもかかわらず、エイダが愛するのはスレイマンという冒頭の建築工事で働いてた貧しい男というのも同じく経済格差を表してる。

スレイマンがある日突然、船で海に出てしまい(スペインへの出稼ぎ?)、エイダが嫌々ながらオマールと結婚式を挙げたその夜に寝室で火事が起こる。これがスレイマンの仕業だとしてエイダが警察からしつこく取り調べを受けていくなかで、担当刑事がなぜか体調不良に何度も襲われる。いっぽうで若い女性のファンタも急に腹痛を起こして寝込んでしまう。これらの意味が分からないまま話が進んでいって、唐突に目が白内障みたくなってる謎の女たちが未払い賃金の支払いを求めてビルのオーナーの自宅に押し入るという謎のホラー展開にいたって頭がパニック状態になった。

エイダとスレイマンが互いを強く求める想いが海の底からスレイマンの魂を呼び戻し、ある人物を媒介して1度だけ再会するということなんだと思うけど(このシーンに「ブレードランナー2049」を連想)、海が人の運命を司る大いなる神の化身のような存在として描かれるという、ちょっと神話的な要素を感じた。
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