こころとからだ

鵞鳥湖の夜のこころとからだのレビュー・感想・評価

鵞鳥湖の夜(2019年製作の映画)
3.6
中国ノワール。泥くさく場末の街並みを中心に描かれるが、どことなくエスプリを感じる。

それは主演のグイルンメイさんのアンニュイな雰囲気のおかげだろう。ただ、きれいすぎて底辺社会の中では浮いてしまっている。日にも焼けておらず、肌艶もよく、タバコも吸い慣れてなく、ただのショートヘアのきれいな女優さんだった。

セットではない生々しい街並みと人々。よくこれを映してくれたと賞賛を送りたい。30万元というたかだか500万〜600万円の金のために、裏切りも殺しも何でもありになってしまうのが、何ともせつない。

ただ、これは2012年と少し前の中国の話であり、今だとその程度の金じゃここまで動かないだろう。

田舎のバイク窃盗が中心のちんぴらにとっては30万元がいかに大きく、逆に薬などを扱っていない健全さを証明しているようでもある。

水浴嬢という衝撃的な設定も目を引く。たしかにこれは取り締まるのは難しいだろうが、そこまでして抱きたいのかと何とも侘しい気持ちにもなる。

マズそうな一杯8元の牛肉麺。それでも辛味と酢を足して全力で食う姿に、まだまだこの期に及んでも生きようという人としての本能というか欲望の力には、切ないがグッとくるところがあった。