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鵞鳥湖の夜のrollinのレビュー・感想・評価

鵞鳥湖の夜(2019年製作の映画)
5.0
🏍狂い咲きサンダーレイク🦆

『薄氷の殺人』のディアオ・イーナン監督が開くノワール史の新たな扉。序盤の早い段階で自分の採点システムはオーバーキルされてしまい、所謂「もうイッてるってばぁ!」状態でしたので、それ以降は追撃ピストン/アヘ顔鑑賞でございました。

雨とネオンと男と女。
掃き溜め遺産級の中華スラムロケーションがもたらす圧倒的ビジュアルパワー。ノスタルジックなディスコサントラと時代劇からサンプリングしたような果たし合いSEのアンバランスさもバチくそにキマってて最高にCOOOL!

西島秀俊と草刈正雄を足して血の混じったチンタオで割ったような主役のフー・ゴー、薄氷のファム・ファタール、グイ・ルンメイを筆頭に、メインからモブに至るあらゆる顔面にコクがあってウマー。特に中尾明慶風小物チンピラ顔な猫兄弟のネーミングと持たざる者ムーブは大好物。

プロット自体はシンプルなんだけど、バイクヤクザたちのわちゃわちゃしたトライブ感、屋外ディスコ、さらには水浴嬢といった中国郊外に於ける大衆文化の丁寧な描き込みが独自の世界観を確立しています。キャラ相関図の矢印が全部一方通行という非情さは、同ジャンル共通項の発見として大変収穫がありました。

北野武、三池崇史、鈴木清順、ウォン・カーウァイ、ナ・ホンジンにエドワード・ヤンと、本作に反映されているアジア圏作品の記憶は枚挙に暇がないけれど、特に強い影響を感じたのは今村昌平監督で、非情の世界に歪なタイミングで差し込まれるハッタリとユーモアのセンスが最高。あと最近ので言えば『レ・ミゼラブル』的要素もあります。

映画に銃が出て来たら発砲されなくてはならないマナーと同じくらいに正しいバイク乗りの処し方。そしてどんなに激しい雨が降ろうとも決して傘を差してはならないノワール主人公ならではの完璧な傘の差し方🌂とエクストリーム包帯巻き。
長回しの中で語り手がスイッチングしていく手際の良さや、絶えず銃声のような威嚇音や心拍音が鳴り響くことでキープされる緊迫感。
『薄氷〜』の主人公を演じたリャオ・ファン視点で語られるエピローグも作品間での時空のループが感じられてたまりまへん。

映画を構成するあらゆる要素が自分をイカせようと攻めて来ます。後に映画館で観たことを誇れるエピックなヤツやな〜と、鑑賞と同時進行でまとめに入っていました。レフン監督同様、これからもディアオ・イーナン監督が好きな映画を撮れる世の中でありますように。

最近はコロナ対策の飛び石着席に慣れてしまっていたので、両サイドを知らんおっさんに守られる懐かしのスタイルに戻った劇場も印象的でした。そんな1on1再開環境で観たのが例の武漢で撮影された本作というのも何かのサインかいな。
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