香港ノアールとはまた違った田舎町ノアール。
常に鳴り続けるソウルフルなナンバー・九龍城砦跡の様な村民達の雑多で湿った生活感・雨と暗闇とネオンのギラギラのコントラストが猥雑でオシャレでカッコいい。退廃美やな。比較的ゆたりとたゆたう展開の中で、時折挿し込まれるギラリと光るナイフのような鮮烈な描写が印象的。光と影・静と動・弛緩と緊張、相反する要素の切り替え、使い方は緻密で計算高く芸術的ですらある。
反面、物語自体はシンプル。もっとミステリー色が強いものを想像していたが淡々と進行、いちいち丁寧に説明してくれるし行間を読む必要性が無いのは逆にマイナス。しかし水浴嬢アイアイの立ち位置は事件そのものの中では不明瞭。主人公チョウと彼女の形容し難い微妙な関係性は好みではあるが感情移入は出来ない。二人の男女がお互いにどの様な情緒を持っていたかは最後まで分からなかったかな。
人間ドラマっぽい感情的なファクターを削ぎ落とし、突き刺さる映像美と死の匂い漂う暗鬱な空気に酔いしれる作品。
犯人遺体の前で記念撮影とか中国ってやっぱりスゴい…
