ひさびさに鑑賞したダルデンヌ兄弟作品。『ある子供』を劇場で観て以来かな? だいぶ間が空いてしまいました(^^;
徹底的に個人に焦点を当てて手持ちカメラで追っていくスタイル、『ロゼッタ』の頃から全く変わってないんですね。
映画が始まった瞬間から、ダルデンヌ兄弟印だな感じました。
物語の背景としてあるのは、イスラム教過激派によるヨーロッパ各都市での自爆テロ事件。
ヨーロッパ育ちの青年たちが、その思想にのめり込み、事件に加担している現実があります。
主人公アメッドは、そういった思想のスタート地点に立ってしまった少年。
この社会的な背景をもっと突き詰めて、痛烈なメッセージを発する作品に昇華させる手もあったと思います。
おそらく、ケン・ローチとかが監督すると、そういう方向性に向かったと想像できる。
ただ、ダルデンヌ兄弟の場合、そうではなくて、ひたすら個人に迫る描き方をしています。
アメッドの行動を、思想に染まり過ぎてダークサイドに落ちていくようなドラマチックな見せ方では絶対描かないし、かなりミニマムな世界のみを捉える。
宗教への浅はかな陶酔に、思春期による素直な少年の感情をぶつけて、アメッドの幼さを浮かび上がらせていた。
原題や英題を見ると「若きアメッド」と付いているのも、納得。
こういった少年の感情を、組織の都合で利用してテロ要員を育成してるのだとしたら、、、。
これもダルデンヌ兄弟らしい問いかけのラストシーンが、静かに物語のテーマを訴えているように感じさせる秀作でした。