Inagaquilala

シチリアーノ 裏切りの美学のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

4.1
1980年代、シチリアのパレルモは、ヨーロッパの麻薬がすべてここに集まってくると言われるほどの犯罪地帯だった。それを支配するのは、「コーザ・ノストラ」と呼ばれるマフィアの集団。しかし、彼らは決して一枚岩というのではなく、血で血を洗う抗争を続けていた。いわば、イタリア版の「仁義なき戦い」という枠組みの物語だが、これをイタリアの今年81歳を迎えるマルゴ・ベッキオ監督が描くと、独特の美学に貫かれた、濃密な群像劇となる。

抗争を避けて、ブラジルに居を移していた主人公をめぐる運命の物語も、実に巧みに折り込まれていく。現在のパレルモに出かけても、これほどの暗黒は見えもしないが、紀元前以来、地中海の要衝にあるため、さまざまな民族の闘争のなかで醸成されてきた闇を、作品では見事に照らし出している。「ゴッド・ファーザー」の故郷で繰り広げられる物語は、最後まで観応え十分だった。原題の「IL TRADITORE」は、裏切り者の意味だが、まさにその主人公トンマーゾ・ブシェッタを演じるピエルフランチェスコ・ファヴィーノの存在感が魅力的だった。
Inagaquilala

Inagaquilala