たいへん明け透けに思いのうちを吐露しているので、ドキュメンタリーという意味では大正解だとおもう。
監督の実家は内陸ど真ん中の成都のジジババ世代、日本でいえば神戸や仙台あたりだと思ってくれればOK。
社会主義ナイズドされた中国の家父長制はややこしくて、同性愛的な価値観や文化に触れることのできる出版物やエリアのようなものは表面化することはない為、核家族化が進む日本と比較しても、少子化は進めどまだまだ二世帯同居などの拡大家族の多い国なので当事者は殊更に"潜る"必要がある。特に上の世代は無理解というより、知る機会すらないのが現状だから。
反面、社会主義だからこそ"性別問わず同志"的概念で、男女平等の原則から70年以上前から夫婦別姓を定めていたり、女性の社会進出が早く、男性は家事や教育の参画意識が高い。女性はいわゆる"気が強い"と言われてしまうほど闊達に見えるしイニシアチブも握る。複雑にも、既存の家父長制的文化基盤のなかで、近代中国では女性の権利については日本よりずっと高く守られてきた。(性差による給料差とかないしね。)
そのうえで、グローバル化した世界をネイティブに生きる下の世代からの突き上げが、この国にもある。ガラスの天井はあれど、時間と共に世代は交代していく。
監督の両親や親戚の感性や言動はそういう意味でもリアルで、海を隔てた我々の感覚のものさしだけで安直にはかる難しさと、わかり合えなさの真ん中で、クッションとして存在するどうしようもない家族愛や優しさが機能している関係性が希望じゃん〜とあたたかさが残った。