もはや、この映画はドキュメンタリーとは言えないかもしれない。監督が農場を演出し、皆が自然体で演技している。犬も、豚も、ニワトリも、山羊も、鳥たちも、ミツバチや、てんとう虫も、そして大自然までもが最高の演技を見せるのだから、どんな名優も太刀打ち出来ないだろう。こんな映画が観たかった。
彼らが推し進めているのは、バイオダイナミックス農法という無農薬栽培。無農薬どころか、コヨーテのような家畜の生命を脅かす外敵をも味方につける。ある種の哲学を実践しているかのようだ。何も抑えつける事もなく、何も排除しない。全てが生きる意味を持ち、全ての生命が共生している理想郷が、ここにある。
農薬を撒き散らした事で生態系が崩れ、環境破壊が殺人的な台風を生み出し、経済発展は人々から心を奪いAIを押し付ける。そして新型コロナなどという目に見えないウィルスが社会生活を蝕む。何事もじっと観察していれば答えは見えてくるとこの映画では語られているが、答えが見えているのに暴走を続ける我々はどうなってしまうのだろうか？ 眠れない夜は、まだまだ続きそうだ。
