和桜

ANIARA アニアーラの和桜のレビュー・感想・評価

ANIARA アニアーラ(2018年製作の映画)
3.1
ノーベル文学賞を受賞した詩人であり小説家ハリー・マーティンソン原作のスウェーデンSF。放射能汚染された地球から火星へと飛び立ったアニアーラ号が、事故によって軌道を外れ彷徨い続ける。
1950年代初頭に書かれた小説なので、詩的でありながらニューウェーブSF的な内宇宙の模索とまでは言えない。当時の流れからすると人類が宇宙へ向かうことを多少否定的に、宇宙空間における人類社会を扱ったものだと思う。モチーフを散りばめるなら、もう少し個の目線に立った内省的な物語が見たかった。思考実験の一種なのでハード的な側面は念頭に置かれてない。

「X年後」という時間の跳躍で進んでいく展開はワクワクするんだけど、映像としてみるとやはりチープ。「MIMA」という閉鎖空間に置かれた人間の感情制御AIは面白いし、あまりに多くの感情を受け続けたAIの行く末も好きなんだけど、今となっては既視感を感じるだけに視覚的な新鮮味が欲しかった。カルト集団や流れてきた未知の物質から成る巨大な槍も同じく。2020年を目前に作られた映画なのに、シチュエーション的にも『ソイレント・グリーン』を上回るホログラムすら見られないのは少し残念。
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