ジャン黒糖

エターナルズのジャン黒糖のレビュー・感想・評価

エターナルズ(2021年製作の映画)
3.5
フェーズ4の映画作品でまだレビュー投稿できてなかった本作。
監督は『ノマド・ランド』のクロエ・ジャオ。

【物語】
この世が創造されるより前から存在したセレスティアルズの1人アリシェムは、最初の太陽の光創出。
やがて知的生命体を捕食するディヴィアンツが地球上に現れ、彼らを退治すべく、惑星オリンピアからエターナルズが送り込まれる。
数千年にわたるディヴィアンツとエターナルズの攻防は収束し、(地球規模でみれば人類同士の戦争が絶えないものの)宇宙規模でみれば地球は概ね平和が保たれていたように見えた。
しかし、ある日再びディヴィアンツが人類の前に現れ…

【感想】
フェーズ4の中では比較的評判の悪い本作。
ただ、フォローするわけではないが、個人的にはフェーズの流れに対する単独作としての狙いはフェーズ4の中でも悪くないゾと言いたい!

というのも、サノス以後の世界のあり方に対して、本作が1番ヒーローのあり方をシンプルな言葉で明確に示しているように感じた。
(ドラマ版も含めるとファルコン&ウィンターソルジャー、フェーズ3も含めるとスパイダーマンFFHあたりもその点では良かった)

エターナルズ自身、元々はディヴィアンツの退治という目的をもって地球を訪れるが、その目的自体は遠の昔に果たしてしまい、今では目的を見失って日常の幸せを何百年と享受し、もはや通常人間には訪れる老いや死が自分たちには味わうことができない、という諦念を持つ者もなかにはいる。
それでも生きる自分を自分たらしめるものは何か。
そんな問いを本作は彼らの数千年の歴史を辿りながら丁寧に描く。


フェーズ4は、サノスという前フェーズまでで最強の敵がいなくなり、それでもヒーローがヒーローである意味を問い続ける"目的探し"のフェーズだったと思う。
たとえば『ソー:ラブ&サンダー』では家族や故郷の星も失った雷神ソーが、それでも立ち上がる姿を描いた。(が、その姿がそれで正解かというと若干納得しづらさもあった)
また、『ドクター・ストレンジMoM』では、サノスとの戦いが何百万分の1通りの可能性によって勝利したというが、それで犠牲になった人の命はどうなのか、戦いに勝つためには本当にあの”Only One Way”しか無かったのか、とスティーブンは問われた。(が、この問いの答えが明確に描かれる訳ではなかった)

ただ、フェーズ4以降、その"目的探し"のためか、どうもキャラ同士のコミュニケーション不足によって戦いを招いてしまう展開が顕著に悪目立ちし、もはやMCUあるある化してしまった印象が強い。
このコミュニケーション不足のひとつの特徴には、主人公らヒーローが各作品内で解決すべきイシューが自業自得による問題であることが多い点が挙げられると思う。

フェーズ2の話になるが、『ウィンター・ソルジャー』だとスティーブのかつての親友が関わる計画を調べていく過程で、シールズが抱える陰謀(=イシュー)が明らかになる。
公開当時まだオバマ政権だったアメリカの暗部さえも透けて見えるような、非常に鋭利なイシューの捉え方をしていてMCUすげぇ!!と思ったコトを覚えている。

一方、フェーズ4の作品の多くは、このイシューが自業自得によって招いた問題であることが多く、そのうえマルチバースによって別バースで起きたトラブルを自分ごととして首を突っ込んでいくのでどうも乗り切れない。

『スパイダーマンNWH』であればピーターとドクター・ストレンジの会話不足によりマルチバースの穴が開く。
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』であればワカンダとタロカン帝国のトップ同士の会話不足により戦争を引き起こす。

その点、話がだいぶ遠回りしたが本作の、ディヴィアンツの根絶という元々の目的、存在意義がなくなったエターナルズが、それでも存在し続けるのはなぜか、という問いはフェーズ4以降のイシューとして納得がいく。

いつか来るであろうアリシェルからの次なる命令か、それとも7000年人類と歩んできた足跡が示すものか。
その答えは、まんま彼らの言葉を借りると「愛するものを守るのが、世界で一番自然なこと」という、しごく全うでシンプルな、ヒーローの根源的なあり方に示されている。


そんな、ヒーローのあり方を自身に問うエターナルズは、かつて目的を果たしてしまったことで、それぞれがそれぞれのやり方で地球での生活に溶け込んでいる訳だけれど、価値観も人種もバラバラな彼らは数千年かけて、その想いはバラバラになってしまっている。
だからこそ、彼らが1人ずつ集結していく姿は、まるで数千年かけたアベンジャーズを観ているようだった!
彼らはアッセンブル、の代わりにユニ・マインドするのだけど、その名前センスも良い笑

そしてそんな面々を、2時間半の上映時間のなかで魅力的に描き分けられてて良かった!

主人公のセルシは、優しさを持った役どころとしてアンジェリーナ・ジョリーを前にしても引けを取らない、ハリウッド大作の主演としてまったく違和感なかった!
イカリスも、スーパーマン並みの超人でありながら、目的を見失いかけたエターナルズとして生きる現在に対して苦悩するところが人間くさくて良かった!
アンジェリーナ・ジョリー演じるセナ、ここぞという場面でキメ画が本当にかっこよく、さすが堂々たる風格!と見せかけて他の部分では繊細、且つ不安定な性格でこれまた人間の弱さが出てた!
コメディアンでもあるクメイル・ナンジアニ演じるキンゴも、アメリカにありがちなドキュメンタリー動画を撮影してるの笑える一方で彼は彼で地球のことが好きなのが伝わる。
ファストスも、人類の進化に道具をもってそっと寄り添う、人類をほっとけない優しさがよき!それゆえ彼が現在腰を落ち着けている生活もすごく良い!
スプライトも、神はなぜ子供の姿にしたんだ!と言いたくなるほど、自身の姿と仲間への叶わぬ想いに苦悩しているのが本当に切ない!
マッカリは手話で仲間と会話するけれど、演じたローレン・リドロフ自身、役のまま聴覚障害を持つ人だったとは知らなかった!アクションがカッコ良すぎた!!
ドルイグを演じたバリー・コーガンは、見たら忘れない顔立ちながら、彼もまた力を持ちながら人類と共に歩んだ歴史に対し、思いを抱える役どころで、良い役者さんやなぁ。
そしてマブリーことマドンソク!これでハリウッド初進出?!と驚いてしまうほど、堂々とした出立ちと、愛嬌あるエプロン姿が最高!セナを思う姿も素敵だった!セナが碇シンジならギルガメッシュは真希波か?!笑

エターナルズみんな人間くさすぎるよ最高かよ〜!


また、本作がクロエ・ジャオ作品初だったんだけど、映画のビジュアル、世界観も嫌いじゃなかった。
広大な海、雄大な大地などの実景をバックに撮影されたシーンはセットの多いMCUにはあまりなかった見栄えで良かった!

終盤の地球の存亡をかけた神々による戦いも、スケールがデカすぎで笑えた!
あれはエヴァのレイやないか!!笑

上空にうっすら浮かび上がるセレスティアルの桁違いな巨大さなど、大胆なビジュアル最高!!



という訳で、
なんだ、前評判悪かったからハードル下げて観たけど悪くないじゃん!



と、満足して終えたいところだけど、
まぁ評判の悪い理由も一方でわかる。。

仲間が集結する度に描かれる回想という名の人類史が、ストーリーの進みを毎回止めてしまって、ついにアリシェムの真の目的、エターナルズが地球を見守り続けなけないといけない理由がわかる中盤の衝撃展開のあともまた回想が入るので、さすがにもういいわ!と思ってしまった。

また、エターナルズ版アッセンブルともいえるユニ・マインドはちょっと都合よすぎるほどに何でもできすぎる力を秘めてて、それまでの苦労がなんかちょっとどうでも良くなってしまった…。

また、ただでさえ、セレスティアルズ、アリシェム、ディヴィアンツなど、到底覚えられない単語が続くなか、各キャラ、各出来事が、なぜそうなるのかの説明が足りておらず、理解が追いつくのに必死なってしまった。
エイジャックはなぜ真の目的を黙ってたのか、なぜセルシが選ばれたのか、なぜスプライトは子供なのか、なぜアリシェルは途中からペラペラと真の目的を話したのか。


ただでさえ並行してマルチバースが盛り上がってるフェーズ4で、より壮大な神々の話まで入ってきて、正直MCUのマルチバース作品がいまのところ苦手な自分としてはこっちの神々路線で進めていってほしかった…笑
だって巨大すぎてアベンジャーズが集結したところでセレスティアルズに勝てるイメージが湧かないもん!笑


ということで、フェーズ4の映画作品、これにて鑑賞完了!
ドラマはムーンナイトやらミズ・マーベルやらホワットイフ…?などまだ観ていない作品もあるけど、ここまででフェーズ4映画作品の自分の★点数は以下のとおり。

ブラックウィドウ★3.3
シャンチー★3.4
エターナルズ★3.5
スパイダーマンNWH★2.8
ドクターストレンジMoM★2.7
ソー:ラブ&サンダー★3.6
ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー★3.8

うーん、、あまり高くない…


さらにちなみのちなみにフェーズ3のアベンジャーズを除く単独作品は以下のとおり。

シビルウォー★4.3
ドクターストレンジ★3.4
GoG2★4.2
マイティソーバトルロイヤル★3.3
スパイダーマンHC★3.8
ブラックパンサー★4.5
アントマン&ワスプ★3.9
キャプテンマーベル★3.5
スパイダーマンFFH★4.2


自分のなかでMCU熱が冷めてしまっていってるのは否めない…
ジャン黒糖

ジャン黒糖