ノラネコの呑んで観るシネマ

アイ・アム・マザーのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

アイ・アム・マザー(2019年製作の映画)
4.3
Netflix。
これはなかなかムーディーなディストピアSFの秀作。
文明の滅亡後、人類の胚を保管しているシェルターで、一人の女の子が生まれる。
アンドロイドの”母“に育てられた”娘“はすくすくと育ち思春期を迎えるのだが、突然外界から怪我を負った”女性”が現れる。
映画の序盤に表示される“ある数字”の違和感が重要なヒント。
本作は構造が「塔の上のラプンツェル」に似ていて、予期せぬ来訪者の出現によって、無垢なる”娘“の信じていた世界は崩壊してゆく。
そしてその結果姿を表す世界の真実に対し、どう向かい合うのかという物語。
これは人間の“娘”と機械の“母”のシェルターという子宮内での継承の物語であるのと同時に、この惑星のグランドデザインに関する壮大な神話でもある二重構造。
一見すると単純なSFスリラーと思わせておいて、本作に描かれるアンドロイドの真の役割には唸った。
登場人物はアンドロイドの“母”を含めてたった三人。
“娘”役のクララ・ルガアードが素晴らしく、”女性“役のヒラリー・スワンクに伍する好演をみせる。
シェルター内外の美術や、無機質なアンドロイドのデザインも秀逸。
SFオタにはオススメ。